渋谷PARCO・4Fの「PARCO MUSEUM TOKYO」にて、俳優・浅野忠信さんの個展「FREAK」が開催中だ。最近手がけたものから倉庫に眠っていた過去作までが一堂に会し、芸術家としての浅野さんの全貌を垣間見ることができる内容となっている。「絵なんて誰にでも描けるはずなんです。ただ、他人の目を気にしてしまうから、『私は下手です』と言ってしまう。だけど、僕は小さい頃からずっと描いてきたから、その謙遜がないんです。これが僕の世界だから、誰にも認められなくてもいいと思っています」と語る浅野さん。絵画はもちろん、木彫、映像まで多種多様な作品が並ぶ同展示について、ご本人に話を聞いた。
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- Kohki Hasei
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- Keisuke Kagiwada
- Edit
- RIDE MEDIA&DESIGN inc.
絵画に対する迷いを払拭した
ボールペンで描くということ
浅野さんはこれまで、「error」(1999年)、「BUNCH」(2003年)、「TADANOBU ASANO 3634」(2018-2019年)と3度の個展を開いている。前回は15年ぶりの個展として話題を呼んだが、それから本展まではたったの2年しか経ってない。今、浅野さんは絵を描く“モード”のスイッチが入っているのだろうか。「『BUNCH』の後もなんとなくは描いてはいたんですが、以前のように毎日という感じではなくなったんですね。絵を描くことに対して、何か迷いみたいなものがあったのかもしれません。だけど、2013年に中国で撮影があったとき(映画『羅曼蔕克消亡史』)、外国での撮影ということもあって、ストレスが溜まってしまって。スケジュール表の裏にボールペンでばーっと描いてみたら、すごい手応えがあったんです。『あ、これだ。なんでもない紙にボールペンで描くってことだけを続ければいいや』って。それでまた毎日描くようになったんです」。
カラー画への挑戦で得られた、今までにない感触
しかし、前回の展示とは大きく異なる点がある。それが“色”だ。前回が白黒画を中心としていたのに対し、本展に新作として展示された作品は色鮮やかなのである。「前の個展が終わったあたりから、その反動なのか、カラーが気になり出したんです。それで本格的に取り組んでみたら、以前にはない感触があって。上手くいかないところに対して、YouTubeなんかを参考にしながら、自分なりの解決策を見出していく中で、『あー、これか』っていう発見ができたり。そういうのは、ただ好き放題に描いていた『BUNCH』の頃にはなかったですね」。ボールペン画よりも手間と時間がかかるカラーに挑戦できた背景には、折からのコロナ禍もあったようだ。「実は去年、俳優の仕事を休もうかなって考えていたんです。それまでノンストップで取り組んでいたので。そしたら、ちょうどコロナ禍が始まって、結果的に、絵を描いたり、木を掘ったりすることに、好きなだけ時間をかけることができました」。
俳優の仕事の延長線上にある、アニメーション作品
「俳優として役を演じるのは、やっぱりすごくストレスがかかることなんですよ。絵を描くことはそれを発散するための手段でもあるんです」と語る浅野さんだが、今回展示されている映像作品については、俳優の延長線上にあるようだ。「僕のところに『俳優になりたいんですけど』って若い人がよく来るんですけど、『じゃあ、何をやっているの?』って聞くと、『何もやってない』って答える人が多い。でも、それって野球にたとえて言えば、プロ野球選手に『何もやってないけど野球選手になりたいんです』って言うようなものじゃないですか。せめて毎日1人で素振りでもしたほうがいい。それと同じように、俳優だってやりようによっては1人でできるんです。特に今はスマートフォンで自撮りすれば映画を作ることだってできるわけですから。とは言え、考えてみると僕は自分だけで撮ったことがないなと思って。『マイティ・ソー/ダーク・ワールド』の撮影でロンドンにいたとき、俳優から撮影までを1人で務めた実写作品を作ってみたら、やっぱり面白かったんですよ。それでいろいろ作っていたら、iPadに描いた絵を動かしてアニメーションが作れるアプリがあることを教えてもらって。今回は、それで作ったアニメーションも展示しています。1枚1枚描かなきゃいけないから大変なんですけど、楽しいです」。
グッズの中でひときわ目を引く
サインボールの誕生秘話
いくつかの絵画作品については、エディションナンバー付きのシルクスクリーンが販売されている。どうして原画ではなく、シルクスクリーンだったのだろうか。「色んな方から売って欲しいって言われるんですけど、作品は自分の一部みたいな感じもしているので、売れないんです。だから、こういう素晴らしいシルクスクリーンにしていただけたのは、うれしいですね」。その他にもグッズは充実しているが、中でも目を引くのがサイン入りボールだ。発案者は浅野さん自身だという。「少し前に地元の友達が結婚したんですよ。僕は忙しくて結婚式に参加できなかったんですけど、後日、参加した別の友達にたまたま会ったら、『サインボールありがとな』って言うんです。意味がわからなくて詳しく聞くと、ビンゴ大会の景品で僕のサインが入ったボールが当たったらしい。それで結婚した本人に確認したら、「おうおう、勝手に景品にさせてもらったわ」って(笑)。でも、面白いアイデアだから、今回グッズにすることにしたんです。野球なんてやったこともないんですけど(笑)」。
作品から展示空間までを貫く
「もったいない」という思想
数ある作品の中で、特にお気に入りの作品を聞くと、「どれも思い入れがありますが、大きい作品はぜひ見てほしいですね」と浅野さん。「大きい猫の作品が何枚かあるんですが、中には渋谷の猫カフェで写真を撮って描いたものもあります(笑)。飼ってはないんですが、動きがあるのでモチーフとして面白いんですよ」。猫以外で、浅野さんの作品によく登場するモチーフが花だ。今回の展示会場の壁のひとつは、それぞれ異なる数十輪の花の絵をプリントした壁紙で覆われている。これはある種のシリーズものと捉えていいのだろうか。「プロの方は個展によってコンセプトが決まっていたりするじゃないですか。『今回は海だけです』とか。そういうことやりたいなと思って、僕も花とかをいっぱい描くんですよ。だけど、せっかちだから描くのも早いし、すぐ飽きちゃうんです。ただ、パレットに出した絵の具が残るのがもったいないので、どんどん描いていったら、自然と増えただけですね(笑)」。封筒の裏に描くことにしても、パレットに残った絵の具を使い切ろうとすることにしても、浅野さんは「もったいないから」という言葉をいい添える。渋谷PARCOが推奨する“サステナブル”という考え方にも近い発想だが、聞けばそれは今回の展示の空間設計にも現れているようだ。「壁は壁紙を剥がしただけだし、ほとんどの什器も以前の展示で使ったものです。余計なものはいらないなって思うんです。別に地べたにどんどん置いちゃっていいくらいなんですよ」。
浅野忠信さん サイン入りポストカードセット プレゼント
2021年4月19日(月)~5月3日(月・祝)の期間中、渋谷PARCO公式インスタグラムにてプレゼントを開催いたします。
<応募方法>
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③「いいね!」していただいた投稿のコメント欄に、コメントをお願いします。
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※応募はお一人様一回限りと致します。
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※当選の権利はご当選者様本人のものとし、第三者への譲渡(有償・無償を問わない)・換金を禁止させていただきます。
<当選発表>
厳正なる選考の上、2021年5月中旬頃、当選者にのみインスタグラムのダイレクトメッセージにてご連絡し、賞品の発送をもって当選に代えさせていただきます。また、賞品の発送は2021年5月下旬を予定しております。諸事情により多少前後する場合がございますので、あらかじめご了承ください。
※期日内にダイレクトメッセージへの応答のない方・当選連絡後、住所等の情報のご提供のない場合は、当選が無効となります。
※当選された方から提供いただきます個人情報は、本キャンペーンの当選のご案内・賞品発送にのみ使用いたします。
※当選理由についてのお問合せは一切受け付けておりません。
※ソーシャルメディアの運用を妨害する行為、趣旨に反する行為、弊社が不適切を判断する行為は禁止致します。
※当キャンペーンはFacebook社Instagramとは一切関係ありません。
※本キャンペーンは、予告なく変更・中止する場合がございますので予めご了承ください。
- 展示名
- TADANOBU ASANO EXHIBITION “FREAK”
- 会場
- PARCO MUSEUM TOKYO(渋谷PARCO 4F)
- 会期
- 2021年4月9日(金)〜25日(日)
- 入場料
- 一般¥700、学生¥500 ※小学生以下無料
- 11:00〜20:00
※営業日時は感染症拡大防止の観点から変更となる場合がございます。詳しくは渋谷PARCOのHPをご確認ください。
※営業日時は感染症拡大防止の観点から変更となる場合がございます。詳しくは渋谷PARCO営業日時をご確認ください。
浅野忠信
1973年11月27日生まれ、神奈川県出身。1990年に『バタアシ金魚』でスクリーンデビュー。2008年には主演作の『モンゴル』が米国アカデミー賞外国語映画賞にノミネートされ話題となる。2011年に『マイティ・ソー』でハリウッドデビュー。2014年に『私の男』でモスクワ国際映画祭最優秀男優賞を受賞。主演作の『岸辺の旅』が2015年カンヌ国際映画祭「ある視点」部門監督賞、『淵に立つ』が2016年同映画祭同部門審査員賞を受賞。公開待機作にNetflix「KATE(原題)」、映画「Minamata(原題)」「Mortal Kombat(原題)」などがあり、NHK連続テレビ小説「おかえりモネ」への出演も決まっている。
音楽活動のキャリアも長く、長編インストゥルメンタル作品「アリが踏まれる瞬間の物語」(2002)で知られるPEACE PILLなどでの活動を経て、地元・横浜のハードコア仲間と2013年にSODA!を結成。 今までになくポップな音楽性で快進撃するSODA!ではボーカルを務めている。
主な展覧会に、個展「error」(1999/リトルモア・ギャラリー[東京])、個展「BUNCH」(2003/リトルモア・ギャラリー[東京])、個展「urge」(2013/ヌイサンス・ギャラリー[東京])、個展「TADANOBU ASANO 3634」(2018-2019/ワタリウム[東京])。
企画展「六甲ミーツ・アート 芸術散歩2019」(神戸市六甲山上[兵庫])、総合芸術祭「Reborn-Art Festival 2019」(石巻市・牡鹿半島ほか[宮城])にも出品している。
画集に『error』(1999/リトルモア)、『BUNCH』(2003/リトルモア)、『蛇口の水が止まらない』(2018/HeHe)がある。
Instagram(@tadanobu_asano)