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ECAL × JEAN PAUL GAULTIER × PARCO 『Under Your Smell』|ジェンダーの多様性と美の新たな定義への賛歌。没入型写真展・オープニングパーティレポート&インタビュー

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ECAL × JEAN PAUL GAULTIER × PARCO 『Under Your Smell』|ジェンダーの多様性と美の新たな定義への賛歌。没入型写真展・オープニングパーティレポート&インタビュー
ECAL × JEAN PAUL GAULTIER × PARCO 『Under Your Smell』|ジェンダーの多様性と美の新たな定義への賛歌。没入型写真展・オープニングパーティレポート&インタビュー

2024年5月30日から6月9日まで、渋谷PARCO「GALLERY X BY PARCO」で開催された没入型写真展『Under Your Smell』。本展は、ジャンポール・ゴルチエの香水を、スイスを代表する芸術大学であるローザンヌ美術大学(ECAL/University of Art and Design Lausanne)の写真学部の学生たちが視覚的に再解釈して作品を制作したプロジェクトを紹介する展示だ。ゴルチエのクリエイティブ・ディレクターであるフローランス・テティエと、写真家で『ノヴァンブル・マガジン』のコンサルタントを務めるニコラ・クーロンが指揮を執り、 ECAL写真学部長ミロ・ケラーと写真家でECALアーティスティック・デピュティを務めるカリプソ・マヒューの指導のもと、フレッシュな作品が誕生した。

本展はこれまでパリのゴルチエ本社を皮切りに、アートバーゼル・マイアミビーチ、スイスエリゼ写真美術館で開催され、今回東京・渋谷PARCOへと巡回した。

本記事では、作品の世界観に没入できる仕掛けが盛り込まれた展示の様子や、TOMO KOIZUMIデザイナー 小泉 智貴 × ECAL カリプソ・マヒュー、MCのユリ・アボによるトークセッション、Hana Watanabe(tamanaramen)のDJがフロアを沸かせたオープニングパーティの様子をフォトレポートでお送りする。後半ではECALで学生たちを指導するカリプソ・マヒューと、在日スイス大使館広報・文化部長のジョナス・プルヴァのインタビューも。

ECAL及びJEAN PAUL GAULTIERの協力と、在日スイス大使館の後援を受け実現した企画の背景までレポートする。

Photo
Sachiko Saito
Text
Natsuko Fukushima
Edit
RIDE Inc.

Index

ECAL × JEAN PAUL GAULTIER × PARCO 『Under Your Smell』没入型写真展 @GALLERY X BY PARCO






この展示の大きな特徴は、没入型の空間になっていることだ。ECALの学生たちが手がけた写真は布にプリントされ、ギャラリーに吊り下げられるほか、壁を覆うように展示されている。プリントされた布はクッションにもなっていて、鑑賞者はそこに座って周囲にある作品を眺められるのが楽しい。そして、作品の題材となったゴルチエの香水を試しながら、リラックスして作品世界を全身で味わうことができる。

本展ではECALの学生たちが手がけた写真の数々から、東京展ならではのセレクトがされている。たとえば「七海みなみ」のフィギュアをモデルに扱ったアイコニックな写真がそうだ。

「学生たちは日本のカルチャーにとてもインスパイアされており、GALLERY X BY PARCOでの展示にこの作品を含めるのは意味があることだと思いました」とカリプソ・マヒューは語る。

気鋭のデザインユニットBIOTOPEが本展キービジュアル・日本限定オリジナルグッズデザイン・ティザーMOVIEを担当

写真は香水瓶を被写体としたものから、フルーツの弾けるようなジューシーさを伝えるもの、若者たちの親密な関係を写し出すものまでじつに様々。美しい色と光、そして身体性が全体に統一感を生み出しながら、香水という難しいテーマに若きクリエイターたちがそれぞれの手法やアイデアで表現を試みたことが伝わってくる。ゴルチエという世界的ブランドを、現代的で瑞々しい感性と確かな技術で作品に昇華。刺激的でありながら、心地よい展覧会だった。

Calypso Mahieu(Coordinator)/ Gaetan Uldry(Assistant)







ECAL × JEAN PAUL GAULTIER × PARCO 『Under Your Smell』オープニングパーティ @ComMunE

オープニングパーティでは在日スイス大使館経済・金融部長グレゴー・ムイシュネーク氏による乾杯に続き、トークセッションが開催。『Under Your Smell』のプロジェクトメンバーでコーディネーターを務めたローザンヌ美術大学(ECAL)のカリプソ・マヒューと、世界的なファッションブランド「TOMO KOIZUMI」のデザイナー・小泉智貴が登壇し、司会はユリ・アボ(雑誌『IWAKAN』編集者)が務めた。Hana Watanabe(tamanaramen)のDJがフロアを沸かせ、翌日からの展示に期待が高まった。









「TOMO KOIZUMI」デザイナー 小泉 智貴 × ECALコーディネーター カリプソ・マヒュー トークセッション

MC: ユリ・アボ(雑誌『IWAKAN』編集者)、小泉 智貴(「TOMO KOIZUMI」デザイナー)× カリプソ・マヒュー(ECALコーディネーター)

まず小泉は本展の感想として、「事前に写真を見せていただいたので、そのクオリティが素晴らしいことはわかっていたのですが、実際に会場では没入型の展示として五感で楽しむことができました」とコメント。マヒューは「写真をプリントしたファブリックのクッションを展示するなど、お客様に没入感を提供することがいちばん大事だと思っていました。すごく良い空間ができ上がったと思います」と手応えを語った。そして本展は写真が壁に固定されているような展示ではなく、鑑賞者がクッションに座ったり、布をめくったりして身体を動かすことで新たな見え方が生まれることがいちばんのポイントだと説明した。

小泉は印象に残った点としてモチーフに言及。「ゴルチエというブランドが持つジェンダーを揺り動かすようなイメージを、学生たちが意識して作品を作っていると感じました。男の子たちが絡み合っているような写真とか、センシュアリティがひとつの重要なモチーフだと思うんですよね。匂いというものを視覚的なイメージに落とし込むという挑戦が感じられました」(小泉)。
もともとゴルチエには大きな影響を受けてきたという小泉。「中学生ぐらいの頃に、ゴルチエから(当時は珍しかった)メンズのメイキャップのラインが出たんです。それがすごく欲しかったのですが、当時の自分には高くて買えなくて」という思い出も。「新しいものを生み出す」というゴルチエのあり方に刺激を受けてきたという。「クリエイターとして新しいものを作っていきたい。そう思うと、カテゴリーとカテゴリーのあいだにある、まだ名前が付いていないようなところは、自分にとって大事な場所」。まさにそうした領域を開拓する先駆者として、ゴルチエをとらえているようだ。

最近は美術作家としても活躍する小泉と、自身もフォトグラファーとして制作を行うマヒュー。ふたりからは本展に関することに限らずいまを生きるクリエイターとしての率直な思いも語られ、参加者からも熱い質問が寄せられていた。

ユリ・アボ / カリプソ・マヒュー / 小泉 智貴 (左)Basil Kraeher(右)Hana / Anna (左)Momo Horii(右)こころ / 隆太郎 (左)杏奈メロディー(右)Hana Watanabe







DJ Hana Watanabe





<NEXT>Calypso Mahieu(ECAL)・Jonas Pulver(在日スイス大使館)インタビュー



右上:Valerie Geissbühler & Léa Sblandano
中央右:Ulises Lozano & Laure Brandford Griffith

中央左:Lorane Hochstätter
左下:Eloïse Genoud & Samuel Spreyz & Matteo Angelé


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