「振り返ってみると、私は演劇にとても助けられていたんだと思います」。静かな言葉の奥にのぞく、俳優として歩み続ける彼女の揺るぎない芯。数々の作品や人との出会いを重ねながら、自分らしい表現を紡いできた黒木華が、「JOHN LAWRENCE SULLIVAN」の2026年秋冬コレクションを纏い、PARCO CRUISEに登場。研ぎ澄まされた服とともに、演じることの原点、今も心に残る大切な景色、そして“楽しむ”ことを忘れない現在の想いを語る。
- Photo
- Tenkou Ma
- Stylist
- Mana Yamamoto
- Hair&Make
- Ryoki Shimonagata
- Text
- Hisako Yamazaki
- Edit
- Mariko Araki、Naoko Kinoshita(RIDE)
攻撃と防御、その狭間にある美しさ。
「JOHN LAWRENCE SULLIVAN」の新しい黒
デザイナー柳川荒士の原点であるボクシングを色濃く投影した「JOHN LAWRENCE SULLIVAN」 2026年秋冬コレクション。他者や社会と一定の距離を保つ“自己防衛の姿勢”に、北欧ブラックメタルに通じる禁欲的なアティチュードを重ね、激しさと厳格さが共存するスタイルを描き出した。象徴的なのは、ボクサーのファイティングポーズを想起させる身体を内側へと構える独特のフォルムや、身体を守る“第二の皮膚”として用いられたレザーやメルトンなど、服を通して身体のあり方そのものを表現する。
黒木華さんが纏ったのは、今季のウィメンズルック。誇張されたパワーショルダーのフリンジジャギージャケットに、同素材のレイヤードスカートを合わせ、足元には重厚なメタルトゥのジップアップブーツを。光や動きに呼応する繊細なフリンジと力強いシルエットのコントラストが、コレクションを貫く緊張感と強さを鮮やかに映し出す。
攻撃と防御、繊細さと強さ――相反する要素をひとつのスタイルへと昇華した「JOHN LAWRENCE SULLIVAN」ならではの研ぎ澄まされたコレクションルックだ。
パワーショルダーが描く、凛とした存在感
黒木華が纏う、モダンテーラリング
黒木さんは渋谷PARCO 3FのJOHN LAWRENCE SULLIVANをショップクルーズ。店内を巡りながら、ブランドの世界観や自身が感じる魅力について語ってくれた。「昔からユニセックスなものや、どこか尖ったデザインが好き」と話す黒木さん。「JOHN LAWRENCE SULLIVANは、スーツにも遊び心があって、クールでかっこいい。女性らしさやセクシーさのあるデザインにも、どこかエッジが効いている」とその魅力を語る。
そんな彼女が着用したのは、ブランドらしいひねりを効かせたベージュのセットアップ。ピークドラペルのダブルブレストジャケットは、メンズのテーラリングにも劣らないパワーショルダーが印象的。サイドに施された大胆なスリットディテールが、端正なシルエットにセンシュアルなニュアンスを。ウールトラウザーズにもサイドスリットを施し、クラシックなテーラリングにJOHN LAWRENCE SULLIVANらしいエッジをプラスする。
このセットアップに合わせたのは、“SCULPTURE BAG”。彫刻のようなトライアングルフォルムが目を引くバッグは、ミニマルでありながら確かな存在感を放つ。シャープな造形がスーツスタイルにモダンなアクセントを加え、黒木さんが語る“遊び心のあるかっこよさ”を体現している。
ジャケット ¥132,000、ハイネックトップス ¥38,500、トラウザーズ ¥66,000、ブーツ ¥110,000
バッグ ¥74,800、リング ¥70,400
俳優・黒木華、その原点にある演劇
演じることから始まった、彼女の現在地
大学在学中の2009年、野田秀樹氏の演劇ワークショップに参加し、翌年、NODA・MAPの公演にアンサンブルとして出演。高校時代から演劇に親しみ、野田作品に憧れていた黒木さんにとって、それは俳優として歩み始める大きなきっかけとなった。
「初めて商業演劇の舞台に立ったのがNODA・MAPでした。宮沢りえさんや古田新太さんなど、それまでテレビで見ていた方々と同じ舞台に立てたことが本当に嬉しくて。野田さんも高校生の頃から憧れていた演出家だったので、毎日が本当に楽しく、たくさんの刺激を受けたことを覚えています。
高校生の頃は、まさか自分が俳優になれるとは思っていませんでした。でも演劇は、自分がいちばん興味を持てて、自分をいちばん表現できるものだと感じていたので、きっと“ずっとそばにあるんだろうな”とは思っていました。20歳くらいの頃、NODA・MAPに出演したことをきっかけに、『俳優という仕事をきちんと職業としてやっていけたら』と思うようになって。その翌年に事務所に入ったので、そこがひとつの転機だったと思います」
演じることは表現する喜びだけでなく、人との関わり方にも変化をもたらした。幼い頃の自分を振り返りながら、演劇という存在についてこう語る。
「演じることの喜びも、昔とは少し変わりました。最初は単純に楽しかったし、もともと自分の気持ちを表現するのがあまり得意ではなかったので、セリフがあることで自分を表現できることが嬉しかったんです。子どもの頃は、男の子みたいに走り回る活発な子でした。でも小学校の後半くらいから人間関係でつらい時期があって、中学生になるとあまり感情を表に出さなくなり、おとなしくなりました。そんな自分が演劇を始めたことで、人と関わることがとても楽になったんです。演劇部には同じものが好きな仲間がいて、共通言語があるといいますか。頑張って言葉にしなくても、わかってもらえるような感覚がありました。振り返ってみると、私は演劇に助けられていたんだと思います」
ジャケット ¥66,000、スカート ¥44,000、ブーツ ¥176,000、チョーカー ¥77,000
迷ったときに立ち返る、大切な景色
表現者として大切にする、“楽しむ”という心
俳優として歩み始めてから、多くの作品や人との出会いを重ねてきた黒木さん。今の自分を形づくったものを尋ねると、「どれかひとつではなく、全部」と振り返る。
「役者として人生が始まったのは野田さんの舞台ですし、その後、山田洋次監督の作品に出演させていただいたことや、海外でのお仕事など、本当にいろんな経験をしてきました。振り返ると、一つひとつの出会いが今の自分をつくっているんだと思います。
中でも忘れられないのが、19、20歳くらいの頃に中村勘三郎さんと野田さんとご一緒した舞台です。当時はまだ事務所にも所属していなくて。そんな時期に、素晴らしい先輩たちが真剣にふざけながらも、お芝居に全力で向き合っている姿をあれほど近くで見ることができた。それは自分にとって大変大きな経験でした。おふたりは本当によくふざけ合っていました(笑)。でも私には、『僕たちは笑うけど、ハルちゃんは笑っちゃダメだよ』って。
また、今でも覚えているのが、勘三郎さんについて『基礎がしっかりあるからこそ、そこからはみ出すことができる』という話を聞いたこと。だからこそ、あれだけたくさんのアイデアが生まれてくるんだなと。おふたりの関係の深さや、積み重ねてきた時間も間近で感じて、『自分もいつか、こんな関係を築ける人ができるかな』と思いながら見ていた気がします。
年齢を重ねて、仕事で迷うこともあります。でも、そんなときにあの頃のことを思い出すと、もう一度頑張ろうと思える。今はもう二度と見ることができない景色だからこそ、私にとってずっと忘れられない、大切な原点になっています」
さまざまな経験を重ねた今も、仕事と向き合う上で変わらず大切にしているのが、“楽しむこと”だという。
「何事も『楽しむ』ということは、昔から大切にしています。お芝居でも、きちんと楽しめるように準備をする。もちろん、楽しいだけではものづくりはできません。でも、どうせなら絶対に楽しいほうがいいし、一緒につくるみんなも楽しいほうがいい。そういう気持ちでつくったものは、観てくださる方にもきっと伝わると思うんです。だから、“楽しむ”という気持ちは、これからも大切にしていきたいですね」


- ショップ名
- JOHN LAWRENCE SULLIVAN
- フロア
- 3F
- 電話番号
- 03-6416-5338
- 公式ブランドサイト
- http://www.john-lawrence-sullivan.com/
- 公式SNS
- Instagram(@johnlawrencesullivan_official)
- X(@jls_tokyo)
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黒木華×tao|しなやかな反骨精神と自由な心

黒木華
1990年3月14日生まれ、大阪府出身。俳優。2010年、NODA・MAP番外公演『表に出ろいっ!』でデビュー。2014年、山田洋次監督作の映画『小さいおうち』で第64回ベルリン国際映画祭銀熊賞を日本人女優最年少で受賞。以降、映画『リップヴァンウィンクルの花嫁』(16年)、『日日是好日』(18年)、『せかいのおきく』(23年)、『アイミタガイ』(24年)、ドラマ『凪のお暇』(19年)、『僕の姉ちゃん』(22年)、『下剋上球児』(23年)、NHK大河ドラマ『光る君へ』(24年)など数々の話題作に出演。今年はドラマ『銀河の一票』、映画『マジカル・シークレット・ツアー』、舞台『NORA』に出演し、現在は映画『時には懺悔を』が公開中のほか、『本当にあった話(の話)』(10月2日公開)、『日曜のあと』(11月20日公開)など、話題作が続々と控える。
Instagram(@haru_kuroki_official)




