夜の東京。アンビエントな都市の風景を舞台に、「JIL SANDER」2026プレフォールコレクションを纏った柄本時生を撮り下ろした。ヴィム・ヴェンダース監督の映画『THE AMERICAN FRIEND(アメリカの友人)』の登場人物に着想を得たコレクションが描くのは、自らの美学を静かに貫く人々。その世界観は、不思議なほど柄本さんの佇まいと重なって見える。俳優として生きることを決意した18歳の日から、今も胸に刻まれているという言葉まで。ファッションとともに紐解く、柄本時生という人物の肖像。
- Photo
- Kodai Ikemitsu(BE NATURAL)
- Stylist
- Emiko Yano
- Hair&Make
- Yuka Sumitomo(MARVEE)
- Text
- Hisako Yamazaki
- Edit
- Mariko Araki、Naoko Kinoshita(RIDE)
知的で心地よいエレガンスを纏う
柄本時生と「JIL SANDER」
クリエイティブ・ディレクター、シモーネ・ベロッティによる「JIL SANDER」2026プレフォールコレクションのインスピレーションとなったのは、ヴィム・ヴェンダース監督の映画『THE AMERICAN FRIEND』(1977年)。その世界観に漂う空気感や人物像を、現代のワードローブへと翻訳した。1970年代ヨーロッパの都市に宿る静かな緊張感。コンクリートや金属、夜や影、湿度を思わせる色彩。そこに存在するのは、過度な装飾ではなく、自らの美学を持って日常を生きる人物たちだ。身体を美しく包むジャケット、自然なドレープを描く素材、抑制されたエレガンス。静かで知的、それでいてどこまでもリアル。JIL SANDERらしいピュアネスに、映画的な情緒がさりげなく重ねられている。
柄本時生さんが着用したウールシェブロンジャケットもまた、そんなコレクションの精神を象徴する一着。しなやかな素材が生み出す柔らかな落ち感と、身体を締め付けないリラックスしたシルエットが特徴だ。テーラリングの美しさを保ちながらも、気負いなく纏える軽やかさが魅力的。
「このジャケットは、正直めちゃくちゃ好きです。柔らかい素材感もそうですし、袖をまくってラフに着られる感じもあって。どこか乱暴に着ても成立するというか、その自由さがすごくいいなと思いました」
普段は“洒落た場所に洒落た服で出かける”という発想はあまりなかったという柄本さん。でも、このジャケットを纏ったことで少し気持ちに変化が生まれたそう。「こういう格好だったら、ちょっといいところに行きたくなりますね」と語るように、肩肘張らずに纏えるのに自然と背筋が伸びる。そんなJIL SANDERのエレガンスが、彼の持つ自然体の魅力をより一層引き立てていた。
ジャケット ¥481,800、ボトム ¥192,500、サングラス ¥91,850、シューズ ¥162,800
心を動かすのは貫き続ける姿勢
そのアティチュードに宿る存在感
夜の東京を舞台にした今回のルックで、ひときわ印象的な存在感を放っていたのが、パープルのVネックニットと、JIL SANDERを象徴するバッグ「TANGLE」のスタイリング。ネオンや街灯がにじむ都市の夜景。幾何学的なラインを描くエレベーターや歩道橋の風景。その中で鮮やかなパープルは静かに浮かび上がり、都会の夜に鮮烈な彩りを添える。「色がすごくいいなと思いました。とてもかっこいいですよね」と柄本さん。
そして興味深いことに、今回のコレクションのインスピレーションとなったヴィム・ヴェンダース監督は、柄本さんにとっても特別な存在だ。映画『PERFECT DAYS』(2023年)を通じて、実際にヴェンダースと仕事を共にしている。柄本さんが振り返る監督の姿は、このコレクションが描こうとする人物像とも重なる。
「今日、このコレクションの話を聞いて、改めてつながっているんだなと思いました。ヴィム・ヴェンダースはめちゃくちゃかっこよかったですね。80代になっても、自分が撮りたいものに対するこだわりを全然崩さないんです。現場でも、自分の感覚を信じて判断するんです。その姿勢が本当に格好よかった。だからこそ、彼は今も世界の第一線にいるんだと思います。『自分はこれを撮りたいんだ』と決めたときのこだわりや感性には憧れますし、それを間近で経験できたことで、『こういう人たちと仕事をするために自分はこの現場にいるんだ』と思わせてもらえたんです」
ニット ¥184,800、ボトム ¥192,500、サングラス ¥91,850、ベルト ¥137,500、バッグ ¥140,800、シューズ ¥162,800
「俳優として社会人になる」
柄本時生の18歳の決意
俳優一家に生まれ、幼い頃から芝居は身近な存在だった柄本さん。しかし、最初から「俳優になる」という強い使命感を抱いていたわけではない。自身が“俳優として生きていく”ことを意識したのは18歳の頃。
「学生でもなくなるし、『ああ、そうか』と思って。それで、たまたまではありますけど、いちばんすぐ近くにあった職業が俳優だったんです。だから、『俳優として社会人にならなきゃいけないんだな』って意識したのが18歳でした」
演じることに対する向き合い方は、18歳の頃からほとんど変わっていないという。
「昔から今でも変わらないですね。与えられたセリフがあったら、そのセリフは一体何なのかなって考えて、一生懸命発する。“喋る”という感覚を大事にしようっていうのは、ずっと変わらずやっています。仕事をすること自体が昔から好きなんです。だから、ずっと楽しいですね。現場だったり、立場だったり、変わってきた部分はもちろんあると思うんですけど、若い人たちの素晴らしい才能を見たときとかは嬉しくなるんですよね。この世界って、ずっと新しい何かが回り続けている場所だと思う。だからすごく刺激的ですし、面白いなって思います」
今の自分をつくった
人生の道標となる言葉
これまで数々の現場を体験してきた柄本さん。その歩みのなかで、今も忘れられずに心に残っている言葉について尋ねると、まず挙げてくれたのは母・角替和枝さんから贈られた、俳優という仕事の本質を映し出すひとことだった。
「母ちゃんが『この仕事は、がっかりすることと待つことに慣れることだ』って言っていて。それは今でも大事にしていますね」
そしてもうひとつ、俳優・佐藤浩市さんからかけられた言葉も忘れられないという。
「当時、何本も仕事を重ねていたときに、『仕事を何本も重ねていると反射が良くなる』って言われたんです。監督に言われたことにもパッと反応ができるようになる。でも、それをやめると今度は思考が働くようになるって。それで、『いつか仕事を一本に絞ったとき、その思考が働いたときに何が起こるか、すごく楽しみにしておけよ』って言われたんです。それは今でもすごく頭の中に残っていますね」


- ショップ名
- JIL SANDER
- フロア
- 1F・2F
- 電話番号
- 03-6427-8808
- 公式ブランドサイト
- https://www.jilsander.com/ja-jp
- 公式SNS
- Instagram(@ジルサンダー)
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柄本時生
1989年10月17日生まれ、東京都出身。2003年、オムニバス映画『Jam Films S』内『すべり台』に出演し俳優デビューする。2008年『俺たちに明日はないッス』で映画初出演。兄の佑とともに演劇ユニットを結成する。映画、ドラマ、舞台と幅広く活躍。独自の存在感と演技力で、コミカルな役からシリアスな役まで自在に演じ分ける実力派として高い評価を得る。2026年7月3日(金)公開の映画『口に関するアンケート』への出演を控えるほか、9月4日(金)〜13日(日)には、飯塚健が演出・脚本・選曲を手がける舞台コントと音楽vol.7 『今宵、丸の内で』に出演予定。
Instagram(@emototokio1989)




