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Interview Jean Jullien|個展「PAPER PEOPLE」「POCKET PARENTS」

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Interview Jean Jullien|個展「PAPER PEOPLE」「POCKET PARENTS」
Interview Jean Jullien|個展「PAPER PEOPLE」「POCKET PARENTS」

今回、SHUBUYA PARCO ART WEEK 2021のメインビジュアルを手掛けたフランス人アーティスト、ジャン・ジュリアン(Jean Jullien)。New York Times、Vogueなどにイラストを提供する傍ら、作家としてドローイング作品をこれまで数多く手がけてきた。日本の漫画カルチャーにも造詣が深い彼に、いつもピュアでユーモラスな作品を創作し続けてこれた背景を聞いてみた。

Photo
Warach Pattayanan
Text
Hiroyoshi Tomite
Edit
RIDE MEDIA&DESIGN inc.

——どのようなアートから影響を?

ヴィラールやベルナール、マティスといった古典的な表現派画家の作品から、メビウスやジャック・カービーのコミックスまで、幅広くから影響を受けているかな。日本だと特に浦沢直樹、手塚治虫、大友克洋、辰巳ヨシヒロ、つげ義春からも影響を受けているよ。

——作品の作り方はどのように学びましたか?

ドローイングを始めたときは、レイモン・サヴィニャックなどの1950年代のフランスのポスターアートや、アメリカのポール・ランドやソール・バスの作品を学んで、それが主流だったんだ。彼らの作品は商業的な媒体にもかかわらず、ドローイングを使ってクリエイティビティを発揮していて、それが面白いなと思って。だから自分も似たような筆の使い方をするようになっていった。自分の描力の限界を自覚しているからこそ、繊細な絵ではなくアイデアや伝えたいことベースに作品を作りたいと思って。ミスの余地を残せる筆を使っていると言えばいいのかな。

——「伝える力」を優先したいからこそ、よりシンプルな作品を生み出したいんですね?

そうだね。できるだけシンプルに、素直で素朴な作品を描きたい。だから「良い絵を作る」より「何を伝えたいか」に集中している。昔はシニカルな作品が多かったけど。ユーモアを交えた政治的な作品を作ってる。その方が時間をかけて鑑賞してくれて、攻撃的にならないでいられるからね。

——大学を卒業後ロンドンを拠点にしていたにもかかわらず街を離れた理由はなんですか?

イギリスでは「ラットレース」というネズミが走り回るように、きりのない出世競争を行うという意味の言葉があって。そんな生活は25歳の時にもうたくさん経験していた。そこで多くの作品を作れたけど、その時により違うことをやろうと思ったんだ。

——それでイギリスを離れて、フランスに越してきたと。新しい街でのチャレンジに怖さは伴わないものですか?

僕は新しいことを始めるときはいつも子供みたいにワクワクしてる。同時にすべてが思い通りに行かないことを新しい場所で思い知ったんだ。実は大学卒業後にアートスクールの入学願書を送り始めたのだけど、全校から拒否されて。自分は才能がなくてダメだと思ったけど、作品を世の中に出してずっと活動してきた。幸運にも私は成功して、多くの人から人気を得ることができた。この体験から「失敗しても大丈夫だ」って思えるようになって。要するに自分が信じ続けたいと思えれば大丈夫。作品を酷評する人が現れても、自分が作品を好きでいれば良いだけなんだよ。

——最近はどんな風に暮らしていますか?

基本的には、パリにいつも住んでいるんだけど、頻繁に故郷へ帰っているよ。だいたい家族と2カ月の休暇を取って、海辺へ遊びに行って、制作したり。今の目の前の人生をできる限り、謳歌してるよ。コロナで多くの人が苦しんでいる中で、人生を楽しみつくすことに違和感を感じるけれど。でも、コロナで人々が苦しんでいるからこそ、作品をSNSで発信したり展示する中で、人々の生活にポジティブさをもたらしたいと思ってるよ。

——ドローイングは会話などの言語的表現にとってかわる言語ですか?

そうだね。仮にフランス語や英語が分からなくても、作品を理解できるはず。それくらいドローイングは素直で直接的だと思います。私の作品が伝わらないならば、それは「僕の伝え方の問題」かな。

——コロナパンデミックを受けて、考え方に変化は生じましたか?

歳をとれば、考え方が変わっていくのは当然。コロナパンデミックは、一つ今までの生き方を変えるべきだという良いシグナルな気がしている。今はよりローカルに根付いた生き方をしたいし、作品でもそれが素直に現れてくるはず。

——クリエイティブでいる上で大事にしているのはどんなことですか?

良い作品を作るには、素直になること。なので、笑いたくない時に無理にコメディを絶対作らない。でもマスクについてのジョークを作りたいと思ったら作るし、「今朝の海は綺麗だ」と思えば海の絵を描く。一枚の絵では収まらないと思ったらグラフィックノベルを作る。「何を作りたいか」を気にしながら制作した方が良い作品ができるし、無理をしないことは大切なスキルだね。

——今回の展示はどのようなものですか?

今回4箇所の展覧会で実現するのは、僕の様々な作品のバリエーションの中から違う視点を見せ、対立しないということを見せるよう工夫する予定だよ。中でもPARCO MUSEUM TOKYOとNANZUKA 2Gでの個展は東京の活動の中心的な存在。なぜかというとNANZUKA 2Gでの「Pocket Parents」は、これから世界中で展開する長期間のプロジェクトの始まりだから。

「Pocket Parents」では、親としての自分の経験を扱い、歳を取ることや責任が増えることについて、ユーモラスな物語として振り返っているんだ。あと「Pocket parents」では小さい銅像と息子のキャラクターが登場し、いろんな商品を使って物語を伝えていくんだ。

PARCO MUSEUM TOKYO では、「Pocket Parents」と同じ世界で起こる別の物語「PAPER PEOPLE」を扱う予定。ドローイングとペインティングの活動を振り返るものとなっている。だからこそまずは大きなペインティングの風景画があって、日常を描いた作品がある。このキャラクターはある朝目覚めて、作者に見捨てられたことに気づく。作者がドローイングをやめてペインティングをしはじめたことに、孤独を感じる。なのでこのキャラクターが自ら別のキャラクターをドローイングし、自分が新しい作者となる。このストーリーは自分のドローイングとペインティングのキャリアを振り返るものでありながら、彫刻などを含めて様々な新しい表現方法を示すものになると思う。

——コンセプチュアルなアイデアですね?

昔からずっとあるものを違う媒体で表現するビジュアルトランスレーションが好きで。例えば、「バットマン」を漫画にしたり、「AKIRA」のぬいぐるみを作ったりすると、原作と違うものが生まれる。このプロセスが興味深い。ビジュアルトランスレーションを通じて小さな彫刻・大きな彫刻、グラフィックノベルで表現させていく予定だよ。

——渋谷PARCOに洋服を買いに来ている人にアプローチするのも興味深いですね?

ある意味で良いリトマス紙になるね。「アートが趣味で目的がはっきりしている人のいる展覧会」だと、興味を惹くことは簡単かもしれない。でも、私や私の作品のことを知らない人にこそ、作品を認知してもらった方がやりがいを感じます。相手がアートに詳しい人だからとかではなく、純粋に興味を惹けられたんだ、と感じ取れるからね。

——作品を通じて、来場者にどんな気分を伝えたいですか?

今説明した以外にも、僕の実家があるブルターニュの街や風景をモチーフにした絵があったり、パリのアウトドア作品もある。日本の東京から見たら反対側の世界にある風景を写した作品を通して、人々に旅をした気分になってほしいな。

展示名
PAPER PEOPLE
会場
PARCO MUSEUM TOKYO(渋谷PARCO 4F)
会期
2021年9月17日(金)~ 10月3日(日)
時間
11:00〜20:00 ※⼊場は閉場の30分前まで。最終日18時閉場。
入場料
一般 700円/学生 500円/小学生以下無料
主催
PARCO
キュレーション
NANZUKA
※営業日時は感染症拡大防止の観点から変更となる場合がございます。
展示名
POCKET PARENTS
会場
NANZUKA 2G(渋谷PARCO 2F)
会期
2021年9月17日(金)〜 10月3日(日) 11:00-20:00
※営業日時は感染症拡大防止の観点から変更となる場合がございます。


© Timothée Chambovet

Jean Jullien(ジャン・ジュリアン)

1983年、フランス生まれ。イラストレーターとして雑誌やファッションブランドに作品提供をする傍ら、ペインティング作品も精力的に制作。日本の漫画文化に造詣の深いことでも知られている。
Instagram(@jean_jullien

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