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Interview 山根敏史(toe)×原田郁子(clammbon)|NORDISK CAMP SUPPLY STORE SHIBUYA

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Interview 山根敏史(toe)×原田郁子(clammbon)|NORDISK CAMP SUPPLY STORE SHIBUYA
Interview 山根敏史(toe)×原田郁子(clammbon)|NORDISK CAMP SUPPLY STORE SHIBUYA

渋谷PARCO 5Fに誕生した「PARCO OUTDOOR PARK」では、アウトドアを楽しむための機能やデザインを兼ね備えたアイテムが所狭しと置かれている。なかでも、2017年に東京に上陸したデンマーク・ノルディスクの世界初コンセプトストアの3号店である「NORDISK CAMP SUPPLY STORE SHIBUYA(ノルディスク キャンプ サプライ ストア シブヤ)」は、ノルディスクの大型テント、同じ北欧ブランド中心に、特定の用途のためだけに生まれたキャンプギア、日常でも着たくなるウェアなど、アウトドアの魅力を総合的かつ日常的に提案するショップとして、同フロア内でも独特の存在感を放っている。

「渋谷PARCOへの出店は、キャンプとは非対称的な立地にあり、ある意味冒険でもあるんです」とは、ショップオーナーの山根敏史さんの言葉。アパレルブランド〈F/CE.〉のクリエイティブディレクターも務め、バンド・toe(ベーシスト)としても活躍する彼に、自然やキャンプ、ファッション、音楽の魅力を語ってもらった。対談相手は音楽仲間でもあるclammbon(ボーカル、キーボード)の原田郁子さん。それぞれの活動を通してさまざまな景色を見てきたふたりのトークには、人生に豊かな彩りを与えてくれるヒントが隠されていた。

Photo
Sachiko Saito
Text
Yuichiro Tsuji
Edit
RIDE MEDIA&DESIGN inc.

——toeとクラムボンはフェスなどでもよく共演されていますし、作品にゲストで参加されたりしていますよね。普段、おふたりがこうしてゆっくりとお話をすることはあるんですか?

原田「山根くんとじっくり話すのは初めてかもしれないね」

山根「そうかもしれないね」

原田「そもそもを言うと、山ちゃん(山㟢廣和/toe・ギター)とミトくん(clammbon・ベース、ギター、コンポーザー)がプライベートで仲良くなって、ライブのPAも同じ、西川さんというお互いのバンドになくてはならない存在の人がやってくれていて。toeの楽曲に参加させてもらったり、イベントやフェスで対バンできる時は飛び入りで参加したり、してもらったり」

山根「あとはミトくんがtoeのプロデューサーをしてくれたよね」

原田「小淵沢レコーディング!美濃くん(美濃隆章/toe・ギター)はクラムボンの「Re-clammbon 2」というアルバムから小淵沢で合宿しながらレコーディングエンジニアをやってくれていて。個々の活動も含めて、濃密で関わり方が深いよね」

——音楽性に関しても、どちらのバンドも振動が伝わってくるというか、演奏がすごくフィジカルだと思うんです。

原田「ライブ一本に対して命がけというか、これで終わってもいいっていうくらいの。そういうところがどっか通じるものがあるのかな」

山根「そうかもね。ライブはその場その瞬間のことなので、チャンスは一回しかないから」

原田「1人1人の個性が際立っているところが素敵で尊敬しているんだけど、メンバーが集まってバンドになった時、尋常じゃなくかっこいいよね。toeは“エモ”がえげつないくらい出てる(笑)。それってもう喜怒哀楽で表すことができない、全部が塊になって爆発していて」

山根「この前『森、道、市場』で郁子ちゃんとミトくんが『グッドバイ』で参加してくれたよね? あのときもめちゃくちゃやばかった。スタジオリハのときから『こんな感じかな?』って言って歌ってくれて、そのときにも郁子ちゃんの歌声が重なった時に、演奏しながら鳥肌が立っていたし、パワーをめちゃくちゃ感じたんだよね」

原田「久しぶりにみんなと会って、ずっとライブができていない状態が続いていたから、うわーーってなったよね。バンドって一緒にダイヴするような感覚になるというか。ドラムのカウントが鳴った瞬間、全員で飛び込む感じがあるよね」

山根「わかるわかる。クラムボンのライブも、スタートの一音目を聴いたあとスッとその世界に引き込まれて、鳥肌がずっと立っている感覚あるよ」

原田「toeのライブを観ててもそうだなぁ。さっき振動が伝わるって言ってもらったけど、まさに」

——いま「森、道、市場」のお話がありましたが、今年のフェスでの思い出はありますか?

原田「少ないながらもそれぞれ印象深かったんですが、「森、道、市場」は、関東を出て、野外フェスに出れるっていうのが久しぶりで。新幹線に乗るのも久しぶりだったから、新幹線の写真まで撮ってしまうくらい(笑)、うれしかった。海があって空が広くて、お客さんたちも楽しんでくれていて」

山根「あのとき写真を撮ったんだけど、クラムボンと演奏したってインスタに上げて。とにかく天気もよかったし、みんな幸せそうだったよね。生きててよかったって本当に思ったし(笑)」

「森、道、市場 2021」 / Photo by タカギユウスケ

——ライブハウスのような屋内空間と、フェスのような野外空間で演奏するのでは、やはり内容に違いがでてくるものですか?

山根「ぼくはあまりシチュエーションは関係なくて、ライブ中は隆史(柏倉隆史/toe・ドラム)のことばっかり見てますね。いつも違うドラムの叩き方をするから、常に発見があるんですよ」

原田「その話、新鮮だなぁ。いちばん近くにいるはずのメンバーから新発見があるんだね」

山根「20年近くやってるけど、いまだにあるね(笑)」

原田「柏倉くん、こないだもドラムセットおもしろいことになっていた!常にいい音を出すために探求しているよね」

山根「演奏ももちろんだけど、すごくストイックな人だなと思うし、リスペクトしてる。勿論メンバーみんな尊敬してる」

原田「クラムボンは、圧倒的に外が好きなんじゃないかな。あの開放感を味わっちゃったから、野外中毒になっているかも。ライブハウスにもホールにもそれぞれに音のよさ、気持ちよさがあるけど、天井も壁もないから、音がどこまでも飛んでいくような感じがするんです」

——野外でライブしているときは、どこを見ていますか?

原田「だんだん日が暮れていく空を見たりとか。一人一人を見ると緊張しちゃうから(笑)。急に雲が立ち込めたりとか、日が射してきたりとか、移り変わっていく光景と音が重なるのを見ているのが好きなんです。そういう瞬間にゾクゾクしたり感動したりします」

山根「それは外じゃないと感じられないよね」

原田「ね。こういう状況になって、ライブができるっていうことがさらに当たり前じゃなくなって、やっぱり思うのは、自分たちだけじゃできないんですよね。山奥まで機材を運んで、ステージを組んで、場所を作ってくれたスタッフの人がいて、そこまで来てくれたお客さんがいて。だからこそ、いいライブをしたくなる。一回のライブは一回こっきりだから、幻のように感じられるというか」

山根「ぼくはクラムボンのライブがいちばん好きかも」

原田「わたしもtoeのライブが好きだなぁ。なんかさ、日が暮れる、って毎日休まず起こっていることなんだけど、そこに音楽が合わさると、たとえようのない感動が生まれるよね。そういえば、2019年のフジロックは、凄まじいかったね。あの雨はちょっと忘れられない」

山根「あのときぼくもゲストとして演奏させてもらったけど、すごくいい経験をさせてもらえて、とても感謝してるよ」

原田「クラムボンとtoeと徳澤青弦くんで、Nujabesの『reflection eternal』を演奏したんですけど、フォトグラファーの太田好治くんが撮ってくれた写真がすごくて、“エモの極み”みたいな」

山根「toeでも韓国のロックフェスでライブをしたときに途中から土砂降りになって、そのときの写真を地元のフォトグラファーが撮ってくれているんだけど、それもめちゃくちゃエモかった(笑)」

原田「見たよ!すごかった!想像を超えることが起こると、やっぱり記憶に刻まれるよね」

「FUJI ROCK FESTIVAL'19」/Photo by Yoshiharu Ota

山根「でも、郁子ちゃんがあまりアウトドアに馴染みがないっていうのは意外だなと思った」

原田「ほんと?憧れるけど、出不精なんです(笑)。だけど、前に美濃くんに相談したことがあるよ。『超初心者なんだけど、どこからはじめればいいかな?』って」

山根「美濃くんとキャンプ行くとめちゃくちゃラクだった(笑)。料理も上手だし、道具も(色々と)持っているから、その時もダッチオーブンもたくさん持ってきて、美味しいパエリアとかも作ってくれて。最高。キャンプに行くときはいつも美濃ファミリーを誘うんだよね(笑)」

原田「いいなあ、楽しそう。山根くんのお店にピザ窯みたいなのあったでしょ?小淵沢で聞いたとき、美濃くんも『あれ、楽しいよー』って教えてくれた。キャンプって、子供も絶対楽しいよね」

「寝心地がうちのベッドよりもいいんだよね(笑)」と山根さんが笑顔で話す「Nordisk × Helinox」のベッド。居住性の高い「Nordisk」のテントと組み合わせることで、居心地のよさや楽しい時間を意味するデンマーク語の“ヒュッゲ”をより強く体感できる。原田さんが店頭で最初に目に留まったという、イギリスブランド「Uuni」のピザ窯は「10分で中のオーブンが500度になるから、そこにピザを入れたら1分くらいでこんがり焼けるんだよ」と山根さんが教えてくれた。焚き火台も軽くてコンパクトに収納できるものがずらりとラインナップされており、原田さんもキャンプ熱が高まった様子。

山根「登山とかは自分との戦いみたいなストイックなシチュエーションになるけど、キャンプは友達や家族といい時間を過ごせるし、道具を買うのも使うのもすごく楽しい。最近は本当にそれを仕事にしていてよかったなって思うんですよ」

原田「うん、うん。どの道具が自分に合うかどうかって、やっぱりしばらく使ってみないとわからない? たくさんあるからどれを使っていいかわからなくなりそう」

山根「そうだね。いろんなものを実際に使って、これがベストっていうのを探るかな。寝袋だけでもたくさんの種類があるし、日本の場合は四季があるから、それぞれの季節に合わせたやつがあるとベストなんだけど、そうすると今度は家での収納が大変になっちゃうんだよね(笑)」

原田「クルマにキャンプ道具を積みっぱなしにしてあって、行きたいときにすぐ出発できる。そういうのに憧れるなぁ。でも、なんか風邪ひきそうって思っちゃって(笑)」

山根「そうなんだ(笑)」

原田「キャンプするのにどこかおすすめの場所とかある?」

山根「奥日光がすごくよくて、中禅寺湖に『菖蒲が浜キャンプ場』っていうところがあるんだけど、湖に面していて景色がすごくいいのと、気候も気持ちいい。これからカヌーを買いたいと思ってて、そこに持っていってやりたいんだよね」

原田「へぇー、すぐメモらなきゃ(笑)。デビューしてしばらくは毎年1ヶ月お休みをもらって海外に行ったりしていたんですけど、なかなかまとまったお休みが作れなくなっていたんです。だけどコロナになって時間の使い方もずいぶん変わってきた。まずは近場でパッと行けるところから、始めてみようかな」

原田「フェスでキャンプしたことはある?」

山根「『GOOUT CAMP』っていうフェスでtoeとして出演させてもらったときに、美濃くんと一緒にキャンプしたのすごい楽しかった!前乗りして家族同士で二泊キャンプしたんだよね」

原田「わー! 最高だね。それは1つの理想かも」

山根「ぼくはどちらかというと、その場所の空気感みたいなものと同期して、その結果いい演奏をしようといつも思っているし、みんないいライブをやろうっていう気持ちには変わりないというか」

原田「うん。パッと行ってライブして帰るより、その場所に馴染める気がするね。絶対風邪ひけないけど!前にフェスで夜の時間にキャンプサイトの人しか見ることができないステージでライブをさせてもらったことがあるんだけど。そこらじゅうにBBQの煙がのぼっててね、お酒飲んだり食べたり、友達や家族といい時間を過ごしてるんだろうなって、羨ましかった」

山根「だけど本当にこういう状況になって、バンドをしたり、服をつくったり、こういうお店をやらせてもらうことの大切さをしみじみと感じるようになったよ。音楽はうまく言葉に表すことができないくらい、自分の中では特別なことであるのと、かつ日常生活の一部なんだけど、そのすべてがあって自分が在るんだなと」

原田「うん。またいろんなところにライブしに行けるようになるといいね。ツアーやイベントのあと、自分だけちょこっと残ったりして、温泉に寄ったり美味しいもの食べたり。そういう時間がすごく大事だったんだなぁって。いまになって思うよ」

山根「それでバランスを取っていたんだね」

原田「ね。メインはもちろんライブをすることなんだけど、ちょっと寄り道するのも楽しい。電車や車で移動するときに山や川や海が見えるのもうれしいし」

山根「ミトくんや大ちゃん(伊藤大助/クラムボン・ドラム)はどうなの? ミトくんとかSNSを見てると、フジロックでめちゃくちゃ楽しんでいる姿がとても印象的だなと」

原田「すっごい楽しんでるよね。わたしはだいたいマネージャーさんと相部屋なんだけど、ミトくんと一緒にライブを観たりすることはないかな。各々個々で、あとからSNSで知る感じです(笑)。大ちゃんは早めに帰っちゃうかも。フジロックでキャンプはしたことはある?」

山根「昔ね、お客さんとして行っていた時にキャンプしたことあるよ。朝、めちゃくちゃ暑くて起きるんだけど、全員斜面の1番下にいるみたいな(笑)ヒトもモノも、全部固まって(笑)テント張るところが斜めになってるから、寝返りしながらごろごろって落ちてっちゃうんだよね。それはそれでなんかすごい楽しかったよね」

——今回、渋谷PARCOに「NORDISK CAMP SUPPLY STORE SHIBUYA」がオープンして、おふたりは渋谷やPARCOの思い出はありますか?

原田「去年、DOMMUNEにフィッシュマンズのイベントで出演させてもらって。宇川さんという、カウンターカルチャーとして独自に活動されてきた方が、渋谷のPARCOをワンフロア、配信の拠点にしているっていうことがおもしろいなと思いますね。渋谷区との取り組みで、先駆けて「5G」生配信をしたり、全館営業ができないときも、DOMMUNEだけは配信を続けていたという話も伺って、すごいなぁと。PARCOの懐の深さというか、いろんなベクトルやエッジィを内包して発信しているところも魅力的ですよね。それはきっとこれまでもそうで、この場所で継承され続けているものだと思うんですけど、渋谷のPARCOは別格に尖っているなぁって感じてます」

山根「ぼくもDOMMUNEでtoeのライブをさせてもらって、異次元で、宇川さんは本当にすごい人だなと思った。そういう人と手を組んでおもしろいことするのは、PARCOにしかできないだろうね」

——「NORDISK CAMP SUPPLY STORE SHIBUYA」の出店を決めたのは、どうしてなんですか?

山根「ぼくはキャンプ道具に魅了されてアウトドアにハマっていったんですけど、いつか自分のお店をやるときには、自分が行きたいなと思えるハイエンドなキャンプ用品店にしたいと思ってたんです。それで〈ノルディスク〉というデンマークのブランドと縁あって仕事をさせてもらうようになって、砧にお店をだしたのが4年前なんですよ。

奥さんとは仕事のパートナーでもあるけれど、子供がうまれて、その後、渋谷区に引っ越したりと、12年間一緒に続けてきた中で、今回PARCOさんからお話をいただいて。『渋谷でこういうお店をだしたら、どういう景色が見れるんだろう?』と思って。オーセンティックなアウトドアショップが渋谷にはあるけど、自分たちはファッションが好きな人たちにもアプローチをするし、ちょっとチャレンジというか冒険して、新しいお客様に提案したいと思ったのがいちばんの理由ですね」

——砧のお店にはない、このお店ならではの特徴はありますか?

山根「砧のショップは中央道と東名高速のちょうど中間に立地していて、キャンプへ行く前や、帰ってきたときに道具を買い足せるようにしているんです。キャンプへ行くと、周りの人たちが使っているギアが気になって、新しく欲しくなったりするんですよ。そうゆうのもあって利便性を考えた場所にお店を構えたんですが、渋谷店はそうした狙いはまったくなくて。ただただ純粋に若い人たちに来て欲しいと思っているんです」

原田「普段全然キャンプしない人もふらっと見に来れそう」

山根「そうそう。そういう人たちが来て、キャンプしてみたいなと思ってもらえるような基地をここでつくりたくて。フェスとかもそうだけど、自分たちの音楽を知らない人たちにも聴いてもらえる場だったりするじゃないですか。自分にとっては音楽もキャンプも体験がすべてというか、ここではそのきっかけづくりをしたいんです。PARCOってファッションもカルチャーも発信しているという話をしましたけど、そうした僕たちの想いとマッチしていると思ってて」

「NORDISK CAMP SUPPLY STORE SHIBUYA」、「POLeR TOKYO」、「ogawa GRAND lodge」、「RED WING SHOE STORE」、「CBD MOTEL」、「L.L.Bean」の新たな6ショップが展開。 「PARCO OUTDOOR PARK」ロゴはアーティスト・ナイジェルグラフ氏、床面デザインはイラストレーターのジュン・オソン氏が担当。

原田「山根くんがこういうお店をやっていることがうれしいです。内装を山ちゃんがやっていて、F/CE. のコレクション映像では、柏倉くんが音楽を担当していたよね。美濃くんと家族ぐるみでキャンプに行ったり、公私ともにバンドメンバーとの繋がりを大切にしているところが、たまらない」

山根「そう言ってもらえてすごくうれしい。ありがとう」

店内の隅から隅まで独自のセンスでセレクトされた、たくさんのキャンプギアがひしめく「NORDISK CAMP SUPPLY STORE SHIBUYA」。気になったアイテムを手に取り、「これは何に使うの?」と原田さんが尋ね、山根さんが丁寧に説明をしてくれた。 キャンドルで火を灯す「Mountain Research」のランタン、ショルダーバッグのように持ち運べるすっきりとしたデザインが特徴の「PRIMUS」のツーバーナーなど、利便性やデザインがバランスよく共存したアイテムが並び、どれをどう使うか、頭の中でキャンプのイメージを膨らませながら店内を巡るふたり。「Mountain Research」のランタンはあたたかみのある良い光で山根さんは家でも愛用しているという。

——店内をご覧になられていかがでしたか?

原田「知らないものだらけでビックリしました(笑)。キャンプグッズが、機能的にもデザイン的にも、想像以上に進化してた!」

山根「全部自分で使って、いいなと思ったものを仕入れるようにしてて」

原田「思い入れとか愛着って伝わるよね。ひとつずつ山根くんに説明してもらって贅沢でした。わたし、山根くんのリュックをずっと使っててね、もう5年くらいかな。今日、持ってきたよ」

山根「代官山の『ROOT』(現 F/CE. Flagship Store)にいきなり来てくれたよね。普段お店にいることは少ないんだけど、たまたまそのときはぼくも奥さんも一緒にいて、『あれ?! 郁子ちゃん?』みたいな。ずっと使ってくれてるのすごくうれしいな」

原田「こういうかつてのアイテムを見るのって久しぶりじゃない?だいぶ味が出てるけど(笑)。ポケットがたくさんついててすごく使いやすくて。ツアーとか、どこか行くときはスーツケースの中にこれを入れて、ふらっとどこか出かけるときに使ったりしてる」

山根「toeのメンバーもみんなうちのアイテムを使ってくれていて、たまにどれが誰のバッグかわからなくなることがあるよ(笑)」

——山根さんはご自身のブランドである〈F/CE.〉のクリエイティブディレクターでもあるわけですが、どんなこだわりを持ってデザインを手がけていますか?

山根「ぼくにはデザイン的な哲学みたいなものがあるわけでもなく、自分たちがつくったものを本当に好きになれるかどうかなんですよね。製品サンプルをつくる前に、トワルといって試作品みたいなものを適当な生地でつくるんですけど、それができたときにものすごく情報量の多いアイテムだといつも思うんです。ぼくの奥さんもデザイナーなので、その情報量を一緒に整理しながら服やアイテムをデザインしていってるんですけど。

常に情報量の多い世界で生活をしているから、たまにそれに疲れることがあって。その点で音楽は自分にとってすごくシンプルなものだから、ピュアに楽しめる。服のデザインは、それを仕事だと捉えると急に情報量が多くなってしまって純粋な部分が薄まっちゃうんだよね。だから、好きなものをつくる。好きな人たちに自分たちの作った服を着て欲しいし、それを長く使ってくれているのを見たときはすごい嬉しい」

原田「言葉が的確かどうかわからないんだけど、〈F/CE.〉の服やバッグって、オシャレすぎないんだよね。山根くんとハルさんが元々持っている感覚なんだと思うんだけど、絶妙なんです」

山根「そう言ってもらえるの、めちゃくちゃうれしいよ。自分の服を身近な人に着てもらうよろこびがぼくにはあって、郁子ちゃんに今日着てもらって似合っているのもうれしいし」

原田「自分にとっては重要で、オシャレすぎるとくたびれちゃう。アウトドアすぎないところもわたしは好きで、着ていてラクで、シンプルで、自分にフィットする感覚がある。そういう服を長く着たいと思うし、山根くんがきっと本質的にそういう人なんだろうなと。あと、これはわたしの勝手な思い込みなのかもしれないけど、値段を下げるのに、めちゃめちゃ努力しているでしょう?」

山根「え? そんなことまでわかるの?(笑)」

原田「伝わるよー(笑)」

山根「高い服って、お金を出せばいくらでも高くできちゃうんだよね。でも、リーズナブルじゃないと絶対駄目だと思ってる。値段とモノは1つのコミュニケーションだから、すごく大事にしていることなんだよね。だから、ものづくりのセオリーも全部打ち壊そうと思っていて。自分たちで開拓して、中間サプライヤーを通さない仕組みや、ダイレクトにお客さんに卸をするような面倒臭いやり方をしているけど、その分価格にフィードバックできるということを納得できるところまでやりたいってずっと思ってます」

原田「できるだけ買いやすく、っていうことと、実際に手を動かして作ってくれている人たちになるべくダイレクトに渡せるように、っていうことでもある?」

山根「そうそう。それが普通のことなんだけど、アパレルの仕組みはそうも簡単にいかないことがあって。だけどぼくたちはそのシステムを壊そうと思いながら、服をつくっているんだよね。それが伝わっていることがわかって、いまめちゃくちゃ感動してるよ(笑)」

——そうした仕組みを壊すこともそうですし、あとはペットボトルをリサイクルした糸でニットのコレクションをつくったりもされていますよね。それはサステナブルというよりも、社会貢献みたいなことを考えていらっしゃるんですか?

山根「大げさなことはあまり考えていなくて。ただシンプルに自分たちのやれることをやろうっていう感覚なんです。前にとあるブランドのお仕事をさせてもらったことがあって、そのブランドは“アニマルフリー”をポリシーに掲げているんですけど、自分はもともとそういうことを意識したことがなかったから勉強したんです。それで繊維産業が環境に大きな負担をかけていることがわかって、自分たちの子供が大きくなったときに地球はどうなっているんだろう? と考えるようになったんですよ。とはいえ、ぼくたちの規模の会社ではできることは限られるから、とにかく自分たちができることはやっていこうっていう意識になったというか」

原田「そうなんだね」

山根「ストイックにそこだけを目指すというよりも、身の丈に合った方法を選んでいるというか。それが地球やぼくたちの生活に対してどれだけいい影響を与えられるか分からないけど、そういう意識は常に持っておきたいと思ってます」

——まだオープンから間もないですが、今後、渋谷PARCOの中でどういった存在のお店でありたいと考えていますか?

山根「『PARCO=アウトドア』っていうイメージを持っているお客さんってまだ少ないと思うんですよ。その印象を徐々に拡大していきたいですね。ぼくたちのお店がきっかけでキャンプに行きたいと思ったり、もともと好きな人たちも『この道具ヤバくない?』っていうようなコミュニケーションが生まれる場所でありたい。自分たちはモノを売るというよりも、経験や価値を売りたいと思っているので、それをきちんと提示していきたいですね。それと、今度イベントもやろうと思っていて」

原田「どんなイベント?」

山根「ここでテントを張って、大人も子供たちも一緒に楽しめるようなものにしたくて。今年は夏のお祭りとかも中止になっちゃったから、ここでそれをやりたいなと」

原田「テントの張り方とかをここで習えたらおもしろそうだね」

山根「そうそう、体験するって大事だから」

原田「説明書読んだりとかするよりも、誰かに直接習ったほうが覚えられそう。講習会みたいなのがあれば、わたしもぜひ参加したいです」

山根「キャンプでYoutubeの動画を見ながらテント建ててる人とかもいるからね(笑)。郁子ちゃんもぜひ遊びに来てね」

■山根敏史さん着用
<F/CE.®︎>NANGA MINIMAL DOWN JK ¥88,000、WATERPROOF WIDE PANTS ¥46,200

■原田郁子さん着用
<F/CE.®︎>NANGA FT LONG DOWN HOODIE ¥91,300、GATHERED LONG DRESS ¥31,900、WOOL QUILT HOOD ¥13,200

—————————————————————

今までどんな情景を目にしてきたのだろう——

インタビュー終了後にどうしても気になり、おふたりに伺ったところ、後日届けてくれた写真がこちら。

美しい世界に互いのエピソードを添えて。

——心に残っている景色はありますか?


アイルランド・エニスタイモン

山根「F/CE.のコレクションテーマでも掲げた、アイルランドのエニスタイモン付近の景色です。曇った空、丘の上に遺跡、そして動物。現実と過去が融合した光景が車の外でずっと続くのが、印象的でした。自然の壮大さを改めて感じました。」(左)


台湾・台東の海辺に立っていたポール

原田「ミュージシャンの summing は先住民のアミ族で、一緒にライブできることになり、彼の故郷を訪れたときに連れてきてもらいました。神聖な場所である海沿いにリゾートホテルが建つ計画が持ち上がって、地元の人たちは反対したけれど、強行的に進められそうになっていて、そんなある日、このポールが建設予定地に立っていたんだそう。木は炭化していて、伝統的な編み方の布が巻かれている。誰が何メートルもある巨木を運んできて、一晩で立てたのかわからないとのこと。だけど、メッセージであることはわかる。言葉にせずに、そこにいることで、静かに何かを伝えている。美しい光景でした。のちに建設計画はなくなり、このポールもある日なくなっていた、と聞きました。」(右)


fin.

ショップ名
NORDISK CAMP SUPPLY STORE SHIBUYA
フロア
渋谷PARCO 5F
取り扱いアイテム
アウトドア ギア/ウィメンズ/メンズ/雑貨
取り扱いブランド
nordisk, APOTHEKE FRAGRANCE, F/CE., AO COOLERS, GRAMICCI, GOAL ZERO, THE NORTH FACE PURPLE LABEL, SOTO, DESCENTE PAUSE, NANAMICA, HALF TRACK PRODUCTS, BYER, BALLISTICS, FEUERHAND, PRIMUS, FreshService, BAREBONES, Petromax, Bobo Choses , White Mountaineering, Mountain Research, LOOMER
電話番号
03-6416-1033
公式ブランドサイト
https://root-store.com/
公式SNS
Instagram : @nordisk_root
免税
TAX FREE
備考
【店舗通販可能】ご希望の方はショップまでお問合せください。
ショップ名
ComMunE
フロア
渋谷PARCO 10F
取り扱いアイテム
カフェ/バー
電話番号
03-6455-3400
公式SNS
Instagram : @commune_shibuya
備考
営業時間:11:00~20:00

山根敏史

1975生まれ、愛知県出身。数々のブランドの要職を経て独立し、2010年より自身の会社である「OPEN YOUR EYES INC.」を設立。アパレルブランド〈F/CE.®〉のクリエイティブディレクターを務める一方で、2014年にROOT (現F/CE. Flagship Store)、2017年に「NORDISK CAMP SUPPLY STORE SETAGAYA」を東京・砧にオープン。2019年には京都、2021年には渋谷PARCO内にも開店。バンド「toe」のベーシストとして音楽活動も行うなど、ファッション、アウトドア、音楽と異なるフィールドをシームレスに行き来しながら活躍。
Instagram(@satoshiyamane

原田郁子

1975年生まれ、福岡県出身。1995年に同じ専門学校に通っていたミト、伊藤大助と共に「クラムボン」を結成し、歌と鍵盤を担当。さまざまなミュージシャンとの共演、共作、ソロ活動も精力的に行なっており、10月14日には寺尾紗穂との共作「傘の向こう」を配信リリースしたばかり。他にも、舞台音楽、CM歌唱を担当するなど、音にまつわる活動を軸に幅広いフィールドで多岐に渡って活躍。
Instagram(@ooo195oool @clammbon_official

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