エッジの効いたスタイルが注目され、さまざまなファッションメディアにも出演する長尾さん。着こなしの秘訣を聞くと「仕事で動き回ることが多いので、動きやすさ重視」と意外な答えが返ってきた。奇をてらい過ぎずとも独自の世界観を貫けるのは、磨き抜かれた感性があってこそなのだろう。セレクトショップ「Sister」のディレクターとして多忙な日々を送る彼女に、休日感覚で渋谷PARCO館内を巡ってもらった。確かな目を持つ彼女の心の琴線に触れたものとは?
- Photo
- Sachiko Saito
- Text
- Eimi Hayashi
- Edit
- RIDE MEDIA&DESIGN inc.



デザインだけでなく機能性も重視。着る人の個性を引き出す「A.P.C.」
最初に訪れたのは、渋谷エリア初出店となる「A.P.C.」。間口が広く入りやすい店内は、オーク材を使用したウッディな内装。温かみがあり、ブランドらしいフレンチシックなエスプリが漂う。幅広い世代に人気がある「A.P.C.」は、長尾さんもファンのひとり。「普段からここのメンズウェアをよく着ています。実は今日着てきた黒のニットもそう。作りも機能性もしっかりしているので、とても着心地がいいです」。

(右)「Suicoke」サンダル[カーキ/エクリュ]各¥24,000+tax
テーマカラーは“黒”。ジェンダーレスなジャケットスタイル
長尾さんの目にとまったのは、メンズの黒のワークジャケット。ヴィンテージライクなデニム生地に白のステッチがコントラストを効かせる。「大ぶりのポケットなどミリタリー要素を取り入れたデザインに惹かれます。XSのサイズ感も絶妙」。シューズもバッグも黒で統一した芯のある着こなしを披露してくれた。店頭ではフットウェアブランド「Suicoke」とのコラボサンダルも展開中。軽量の厚底ソールが快適な履き心地を叶える。


引き継がれていくヴィンテージデニムの魅力。
サスティナブルな視点もポイントに
渋谷PARCO店は「バトラープログラム」の対象店舗でもある。穿き古したA.P.C.のローデニムジーンズを持っていくと、色落ち具合や状態がいいと判断されたものに限り、半額で新しいものと交換してもらえる企画だ。回収されたジーンズの裏地には前の持ち主のイニシャルが記され、「バトラージーンズ」として再び販売される。何年も穿き込んで生まれた表情には唯一無二の魅力があるほか、廃棄削減につながるサスティナブルな視点にも注目したい。

- ショップ名
- A.P.C.
- フロア
- 渋谷PARCO 2F
- 取り扱いアイテム
- ウィメンズ/メンズ/服飾雑貨
- 取り扱いブランド
- A.P.C.
- 電話番号
- 03-6416-0036
- 公式サイト
- https://www.apcjp.com/jpn/
- 公式SNS
- Instagram : apc_paris
- twitter : @APC_JAPAN
- 免税
- TAX FREE



世界中の“永遠の名作”が集う空間で、新しいクリエイションを発掘
次に訪れた「H.P. DECO アート感のある暮らし」は、長尾さん愛用のインテリアショップ。異国感漂う店内には世界中のクリエイションが並ぶ。中でも人気は、ヴィンテージの図鑑や雑誌からの図柄をモチーフにした「JOHN DERIAN」のプレート。長尾さんが足をとめたのは、NYの刺繍ブランド「CORAL & TUSK」のクッションやマスコット。シュールなタッチの動物モチーフが愛らしい。パリ発「ASTIER DE VILLATTE」の真っ白な陶器にも目を奪われる。19世紀の器から着想を得たデザインは、アンティークのよう。ほかにも多彩なアイテムがずらり。心躍る逸品に出会えるはず。


(下)「JOHN DERIAN」のペーパーウェイトや、「Tsé&Tsé associées」による21本の試験官を連ねたフラワーベース“4月の花器”。
大切なあの人の顔が浮かぶ
プレゼントしたくなるアイテムの宝庫
「ここでよく友人のプレゼントを買っています」という長尾さん。パリのガラス工房「La Soufflerie」の代表作、顔モチーフの花器もそのひとつだ。リサイクルガラスが主原料の手吹きグラスはひとつとして同じかたちがなく、選ぶのも楽しい。人に贈り物をするのが好きな長尾さんに、プレゼント選びのコツを聞いてみた。「とにかく簡単にすませないこと。遠い場所にも足を運び、相手のことをじっくり考えて選ぶようにしています」。


(下)「BELLOCQ」イエローの缶入りのトラベラーキャディ―¥4,500〜+tax ※価格はブレンドにより異なります。
思わず笑顔になる個性派揃い。人気のブレンドティーはテイスティング可能
長尾さんが心惹かれたのは「ASTIER DE VILLATTE」の猫の香炉。台座に線香を入れると口から香煙を吐き出す、ユーモラスな仕掛けが施されている。「灰が飛び散らなくていいですね。我が家に欲しい!」。さらに、お茶好きな彼女はNY発「BELLOCQ」のブレンドティーを購入。オーガニック茶葉をブレンドした豊富なフレーバーの中から、レモングラスの香りが力強いNo.12「ル・アモー」をチョイスした。店頭で試飲もできるので、ぜひ味わってみて。


- ショップ名
- H.P.DECO アート感のある暮らし
- フロア
- 渋谷PARCO 1F
- 取り扱いアイテム
- インテリア/ライフスタイル雑貨/服飾雑貨/ウィメンズ
- 取り扱いブランド
- ASTIER de VILLATTE/JOHN DERIAN/ECOLE DE CURIOSITES /pero/DORETTE etc
- 電話番号
- 03-5422-3983
- 免税
- TAX FREE


※現在は終了しています。



「美術手帖」が運営するカフェギャラリー
気鋭アーティストが手がけるコレクションも
最後は、ギャラリー・カフェ・物販を展開する「OIL by 美術手帖」へ。現代アーティストの作品が展示されており、「EN TEA」の茶葉を使用した日本茶とともにアートを楽しめる。この日オーダーしたのは、緑茶の甘みがしっかり感じられて爽やかな「クイック水出し茶」。店内ではさまざまなアートコレクションも販売。美術手帖のバックナンバーも自由に閲覧できる。

アートとの距離を縮めるきっかけとなる場所。
現場の空気感を肌で感じ取って
ファッションや映画のみならず、アートへの造詣も深い長尾さん。普段はどのようにアートを楽しんでいるのだろう。「休日に美術館に行ったり、クラシックバレエやコンテンポラリーダンスの舞台を鑑賞したり。本や映像で満足するのではなく、現場にしかない空気感を大切しています。OIL 美術手帖は、ショッピングの合間にアートを楽しめる気軽さがいい。アートとの距離を縮めるきっかけを作ってくれる場所ですね」と笑顔で語ってくれた。



注目の画家、今井麗氏の個展が開催中。オリジナルポスターやグッズ販売も
3月15日(日)までは、注目の画家・今井麗の個展「MARCH」が開催中。コアラのぬいぐるみやキャラクターの人形を描いた表題作『MARCH』(2020)のほか、日常をすくいとるように身近なモチーフを描いた作品が展示される。オリジナルのポスターやグッズも販売され、本展の収益の一部は、オーストラリア森林火災で犠牲になったコアラへの支援金として寄付される。貴重な機会に、ぜひ足を運んでみて。

- ショップ名
- OIL by 美術手帖
- フロア
- 渋谷PARCO 2F
- 取り扱いアイテム
- カフェ/ギャラリー/雑貨
- 電話番号
- 03-6868-3064
- 公式サイト
- https://oil.bijutsutecho.com/
- 公式SNS
- Instagram : @oilbybt
- twitter : @OILbyBT
- 免税
- TAX FREE
- 備考
- 営業時間:10:00 ~21:00

長尾悠美
セレクトショップ「Sister」のディレクター兼バイヤー。国内外のデザイナーズブランドやヴィンテージアイテムをウィメンズ中心にセレクト。ファッションのみならず映画やアートにも造詣が深く、その幅広い知識と審美眼を活かして多方面でコラボレーションを展開。近年は女性の支援にも積極的に取り組む。2018年に独立。同年7月には渋谷区松濤に「Sister」をリニューアルオープン。
Instagram(@yummybrain)