写真家・七緒さんがAKB不動のセンターであり、卒業後も役者として活躍する前田敦子さんを月に1度撮り下ろすプロジェクト「前田敦子の“月月”」初の展覧会が渋谷PARCO B1F「GALLERY X」にて、8月15日(月)まで開催中。「飾らないあっちゃんの人間味を感じてほしいなというのが、“月月”のコンセプト」と七緒さんが語るように、そこには私たちが見たことがない“人間・前田敦子”の姿を捉えた写真の数々が展示されている。このプロジェクトのはじまりから、個展で表現したかったことなどをおふたりに聞いた。
- Photo
- Nao
- Styling
- Yusuke Arimoto
- Hair&Make
- Riho Takahashi
- Text
- Hisako Yamazaki
- Edit
- RIDE MEDIA&DESIGN inc.
1通のDMからはじまった“月月”。
人間・前田敦子と対話し、シャッターを切る
“月月”のプロジェクトは、写真家・七緒さんが2020年12月22日に前田敦子さんが独立を発表したその瞬間に、InstagramからDMを送ったことからはじまった。「あっちゃんが独立の発表をしたとき、『絶対に撮りたい!』と思いが込み上げてDMを送ったんです。何か今後の展開を考えて…というのではなく、直感で送ったんですよね。そうしたら、あっちゃんからインスタをフォローされて、その後すぐDMが届いて。『信じられない!』という気持ちはもちろん大きかったのですが、その一方で『これは、撮影させてもらえるかもしれない』って。なぜそう思ったのかは、うまく説明できないのですが…もともと私は13年前からあっちゃんのファンだったので、夢のような話ですけど、なんか合うんじゃないかなってどこかで思っていて。高揚感と冷静さが同居していた感じでした」と、七緒さんは“月月”のはじまりを振り返る。
満月から新月になり、満ちては欠け、欠けては満ちる…毎日、少しずつ違って見える月のリズムは、“月月”に映し出される前田敦子さんの姿とシンクロする。「月のサイクルは、人間の感情と似ているなと思って。この1年7ヶ月のあっちゃんを見ていただくと、満ちているときのとびきりの笑顔もあれば、欠けているときのちょっと辛そうな顔もある。でもそれがすごく人間らしくていいなって」と七緒さん。
苦しみも辛さも、隠さずにさらけ出す。
嘘がない前田敦子という魅力
DMでのやり取りからほどなくして、前田敦子さんと七緒さんはカフェで待ち合わせを。心をオープンにお互いのことを語り合った。「DMって本当に見ないんですけれど、ダッチーからのDMはなぜか目に入った。開いてみたら、すごく熱い真っ直ぐなメッセージが届いていて。すぐにホームページを拝見し、見た瞬間『素敵だな』と思って。女性をたくさん撮られていることにも惹かれました。女性が撮る、女性の写真が私は好きなので。『私もこんなふうに撮ってもらえるのかな』って。だから『じゃあ一度、会ってお話ししましょう』と返信したんです」と前田さん。
こうして、“月月”の撮影は2021年1月からスタートした。“月月”展では、1年7ヶ月分の写真が月ごとに展示され、撮影時に前田さんがなにげなく発した印象深い言葉も綴られている。「展示のコンセプトは、『私って、何だろう。』。これは2022年6月の撮影中に出た、あっちゃんの言葉なんです。よくよく話を聞いてみると、ひとりの女性としての悩みや葛藤があると言っていて。彼女は嬉しい時は本当に嬉しそうな笑顔を見せてくれて、苦しい時は隠さず辛そうな顔をする――今って、SNSの影響もあって笑顔でキラキラしたものが良いと思われる世の中ですが、私は苦しい部分も人生だと思っているので、苦しかったり、辛いところもちゃんとそのまま出してくれるあっちゃんが本当に素敵だなって思っていて。そういう飾らないあっちゃんの人間味を感じてほしいなというのが、“月月”のコンセプト。この展示は、前田敦子というひとりの女性の1年7ヶ月を追体験してもらえるような作りになっています」。七緒さんはそう語った後、「今流れている音楽は、この展覧会のために作ったプレイリスト。会場を包み込むお香も、あっちゃんが自宅で焚いているお気に入りの香り」と教えてくれた。写真を見て、言葉に触れて、音を聴いて、香りを楽しむ…“月月”の空間で時を過ごすと、じわじわと五感が開かれていく実感を得られる。
「私の心みたいなものが
明確に写真に表れていますよね」
写真家・七緒さんにとって一番好きな写真はどれかを尋ねたら、展覧会場で一番大きな写真である2022年2月の前で立ち止まった。「この時、あっちゃんは少し疲れていて…。夕方の四谷で撮ったのですが、この夕日の感じや偶然入ったフレアがとても儚くて、でもとても強くて。この時すでに1年2ヶ月間、あっちゃんを撮り続けていて。私は1年2ヶ月目だから撮れた写真だったのではないかなって。“月月”でなければ、撮れなかった1枚だと思っています」。
——不真面目になりたい。役者だけやっていたら詰まっちゃう。
とは、七緒さんが一番好きな2022年2月の写真の横に飾られている言葉。どんな心境で撮られた1枚だったのか、前田さんに聞いてみた。「この時は、仕事のことですごくモヤモヤしていたんですよ。冬だっていうのもあるんですけれども。私は冬、あんまり元気がないんです(笑)。仕事の面で結構、耐えなければいけない時期でもあって…いろいろ感じてることがあった時に、撮ってくれた写真。その時、その時の感情がダッチーの写真には切り撮られている。私とダッチーにしかわからないことがたくさんあるのですが、ふたりでその瞬間の気持ちを話しながら撮っているから、私の心みたいなものがものすごく明確に写真に出ていますよね」。
女性としての歩みをともにする
写真家・七緒が撮る前田敦子の成長日記
「2021年1月の初めての撮影前、ふたりでお茶した時にダッチーが妊娠していることを教えてくれて。『ええ〜!』っていうところから撮影がはじまった(笑)。毎月会うごとに、ダッチーのお腹がどんどん大きくなって、あっという間に生まれて、抱っこさせてもらって、旦那さんにもお会いして…。女性としての歩みを、一緒に歩めている人だと思っています。臨月の時も『絶対にやめないで撮る!』って、大きなお腹で撮ってもらったのをすごく嬉しくて覚えている。2021年10月の撮影は、私が息子を撮影に連れて行って、横で遊んでいる時に撮ってもらった写真なんです」(前田さん)。心なしか穏やかな表情でカメラを見つめている、一児の母である前田さんの姿が2021年の写真に写っている。
「私の仕事もプライベートも、両方の私を一番近くで見てくれている存在。私自身は自分のことをよく分からないんですけれども(笑)、近くで見てくれているダッチーにしか見えないものを写真で撮ってくれる。私の側にいるダッチーが、客観的な視点で私を映し出してくれているというか。“月月”の写真は成長日記でもあり、自分自身が生きた証。人間・前田敦子を見てもらえたら嬉しいです」(前田さん)。
“月月” 2021年 spin off “月月” 2022年5月 初公開 “月月” 2021年11月
- 展示名
- 前田敦子×七緒 「前田敦子の"月月"展」
- 会場
- GALLERY X(渋谷PARCO B1F)
- 開催期間
- 〜8月15日(月)まで
- 営業時間
- 11:00~20:00 ※会期中無休、最終日のみ18時閉場
- 入場料
- 500円(税込) ※未就学児無料 ※株主優待あり(入場無料)
- ※詳細は下記URLをご確認ください。
https://art.parco.jp/galleryx/detail/?id=1024
- ショップ名
- GALLERY X
- フロア
- B1F
- 電話番号
- 03-6712-7505
- 公式サイト
- https://art.parco.jp/
- 公式SNS
- Instagram(@parcogx)
Twitter(@parco_x)
前田敦子
1991年7月10日生まれ、千葉県出身。AKB48の1期生、“不動のセンター”として活躍し、2012年に卒業。卒業後は舞台や映画を中心に、俳優としてキャリアを重ねる。30歳という節目に、仕事、子育て、恋愛観など等身大の思いを綴ったフォトエッセイを「明け方の空」を昨年10月に発売。今年2月からWOWOWで放送・配信された「アクターズ・ショート・フィルム2」にて短編映画の監督も務めた。9月3日〜19日まで、ミュージカル「夜の女たち」(中塚圭史演出)に出演、この秋には主演映画『もっと超越した所へ。』の公開も控えている。
Instagram(@atsuko_maeda_official)
七緒
1987年神戸市生まれ。雑誌編集者を経て2017年独立。飾らない一瞬を切り取ることで内面を引き出し、写真と文を組み合わせた情緒ある表現に定評がある。写真集『Ambivalence』出版、雑誌『あわい』創刊など作品制作も。東京・清澄白河在住。
Instagram(@naotadachi)(@maeda_atsuko_no_tsukitsuki)