24AWの新作コレクションが一堂に揃う渋谷PARCOで、アーティスト・千葉雄喜さんがクルーズ。スタンリー・キューブリック監督の遺作『アイズ ワイド シャット』からインスパイアを受けた「JW ANDERSON」のMen’s Autumn Winter and Women’s Pre-Fall 2024 Collectionを身に纏い、艶やかに歪んだ倒錯的で美しいファンタジーへと没入する。自身がディレクションを務める「Dogs」の幼馴染である仲間も交えてインタビューし、素の千葉雄喜さんに迫った。
- Photo
- Shunya Arai
- Stylist
- Lambda Takahashi
- Text
- Hisako Yamazaki
- Edit
- Mariko Araki, Hanako Fujita(RIDE)
伝統的な正装と奇妙な歪みが共存する、
艶やかで型破りなシルエット
「JW ANDERSON」のMen’s Autumn Winter and Women’s Pre-Fall 2024は、初めて映画からインスパイアされたファンタジーなコレクションに。着想を得たのは、スタンリー・キューブリック監督の遺作『アイズ ワイド シャット』(1999年)。映画の中に象徴的なディテールとして扱われている絵画やカーテン、ポインセチア、赤などがコレクションに落とし込まれ、キューブリック監督の妻であるクリスティアーヌ・キューブリックにより描かれた絵画が印象的に取り入れられている。裕福な医者である主人公が、ある晩、妻から他の男に惹かれた経験があるという告白を受けて動揺する。気分が落ち着かぬまま夜の街をさまよっていた彼は、ある秘密の集会(仮面舞踏会)に関する話を友人から聞き、やがてその禁断の世界へと没入していく……。コレクションでは、この映画の倒錯的な雰囲気を規格外のビッグシルエット、奇妙な配置のスリーブ、巨大なスリーブの歪んだシルエットになったシャツなどで醸し出し、また仮面舞踏会の正装した男女の艶やかな雰囲気をなめらかな素材のコートやタキシードシャツで表現した。
伝統的な紳士服を企画外の
オーバーサイズでクラッシュさせて
「キューブリックはめちゃくちゃ好き。いちばん好きな映画監督なんで、コレクションにいいとこチョイスするなあって思いました。『2001年宇宙の旅』が、すべての映画のなかでいちばん好きな映像です。物語というより映像がやばい」
千葉雄喜さんが着用するオーバーサイズのダブルジャケットは、「JW ANDERSON」の今シーズンを象徴するルックのひとつ。映画のインテリアで印象的に使用している赤を、カーテンやソファなどクラシックな内装を想わせるベルベットのファブリックで掛け合わせた。一見、伝統的な紳士服のようでありながら、どこかロンドンのパンキッシュなカウンターカルチャーも漂わせるJW ANDERSONらしい自由な雰囲気の一着となっている。
美しくもダークなファンタジーを描く
すべてが歪んでいるような絶妙なシルエット
千葉さんが着用するシアートップには、クリスティアーヌ(キューブリック監督の妻)が描いたポットに植えられた花々の絵画をプリント。ボディラインを強調するスリムフィットのトップスには、リラックスフィットなデニムと真っ赤なオーバーサイズVネックカーディガンをスタイリングした。どこかすべてが歪んでいながらも保たれる絶妙なバランスは、今季のJW ANDERSONの真髄を感じさせるシルエットに。
「赤のイメージは、血ですね。好きな色は、黒以外。洋服の話なんですけど、ずっと黒ばっか着ている時期があって。で、黒着るのをやめてみようと思ったら、黒を着たくなくなりましたね。自分を色にたとえると……青系。青、水色、ターコイズ、黄色、赤、オレンジ、ピンク、透明、虹――虹です。俺は虹色です。黒以外、全部だから」
千葉雄喜を形作るものとは?
幼少期から変わらぬ友人に囲まれて
SNSを通して一般の方から送られてくる、さまざまな悩みを綴ったDM。その1人1人に応えることもあったという。いまでは自身の番組として、ひとに勇気を貸すため、全国に足を運ぶ。達観したような受け答え。いったい、何が彼を形作っているのだろう。
——幼少期から、今の自分を形成する上でもっとも影響を受けたと思うものは?
「『世紀末リーダー伝たけし!』です、完全に。バイブルって感じがしますね、俺の中の。俺を形成したもの。この漫画を読めば、『あっ、だからあの人はああいう感じなのね』っていうのがわかりますね、たぶん(笑)」
——ちなみに、千葉さんは家ではどんな父親ですか? お子さんにどんなふうに接していらっしゃりますか。
「普通ですよ、こういう感じで。人と人、で話している感じですね」
——これからやりたいことはありますか?
「ビルが欲しいですね。ビルに好きなものを詰め込んで。車が好きなんですけど、車3台置けて、ビリヤードできて、卓球できて。服つくれて、売れて。音楽作れて、飯食えて、コーヒー飲めてっていうところをつくりたいですね」
——渋谷での忘れられない思い出を教えてください。
「初めてのライブが渋谷でしたね。渋谷PARCOの向かいにあるROCKWEST。今はもうないんですけれど。18のときっすね。初めてのライブで、みんな来てくれました。(少し離れて座っている友人に向かって)ゆうじいた? いないよね?」
ゆうじさん:「いちばん最初のライブ、いましたよ。高3でした。懐かしいな」
千葉さん:「いたか! 目の前にいたか(笑)」
——友達はそのときからずっと変わらないですか?
江州さん:「彼は12歳ぐらいまでは、ちょっととんがってて、やんちゃだったんですよ。そっから逆に落ち着いて、ずっとこんな感じ」
——江州さんは何歳で千葉さんに出会ったんですか?
江州さん:「6歳ですね。小1からずっと一緒なんです。同じ団地の同じ棟に住んでました」
——千葉さんが12歳で落ち着いた理由は?
千葉さん:「なんか、友達いなくなると思って。もうすべてを力でやるみたいな愛のない最悪人間だったんで。それで、そういうのしなくなりましたね。言葉遣いとかも」
——生きる上で信じたいものはなんですか?
「“信じてない”ってことですよね、じゃあ。信じているものならわかりますけれども」
——では、信じているものはなんですか?
「わかんないっすよね(笑)。信じる……信じたいもの。わかんない。なにも信じてないっす」
——自分のことは?
「信じてないっす」
——仲間は?
「信じてない」。
そう彼が言った瞬間、隣に座っていた幼馴染の江州さんが「ひでーヤツじゃん!」とツッコむ。
「いや、全部信じています(笑)はい。ずるい答えですよね。疑うことさえ信じていますね」
- ショップ名
- JW ANDERSON
- フロア
- 3F
- 電話番号
- 03-6277-5277
- 公式ブランドサイト
- https://www.jwanderson.com/jp/
- 公式SNS
- Instagram(@jw_anderson)
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千葉雄喜
1990年4月22日生まれ、東京都北区王子出身。2020年1月にKOHHとしての引退を表明。2024年2月に、本名である千葉雄喜として「チーム友達」を配信リリース。国内外でムーブメントを起こす話題曲に。昨年末より開始した、月刊文芸誌『文學会』で連載中の「千葉雄喜の雑談」をはじめ、Yan Seku初のソロアルバム『NATURAL PUNKS』の総合プロデュース、MV監督・撮影・編集などを手掛けるほか、地元である北区王子にあるセレクトショップ「Dogs」のディレクション、アート作品などを発表など、多岐にわたる活動をしている。
Instagram(@yukichiba_)