• ホーム
  • 特集
  • Interview Balming Tiger | 韓国のクリエイター集団 Balming Tiger が世界に放つ、遊び心あふれる創作背景とエキサイティングなライブパフォーマンスをレポート。

Interview Balming Tiger | 韓国のクリエイター集団 Balming Tiger が世界に放つ、遊び心あふれる創作背景とエキサイティングなライブパフォーマンスをレポート。

  • LINE
Interview Balming Tiger | 韓国のクリエイター集団 Balming Tiger が世界に放つ、遊び心あふれる創作背景とエキサイティングなライブパフォーマンスをレポート。
Interview Balming Tiger | 韓国のクリエイター集団 Balming Tiger が世界に放つ、遊び心あふれる創作背景とエキサイティングなライブパフォーマンスをレポート。

オルタナティブK-POPバンドを自称する、韓国発のコレクティブBalming Tiger(バーミング・タイガー)。エネルギーあふれるパフォーマンスとワン・アンド・オンリーなサウンドとビジョンで世界中から注目を集める彼らは、2024年4月より渋谷PARCOの館内BGMセレクターを務めている。11月には、渋谷PARCOリニューアル5周年を祝福するイベントのオープニングパーティーに駆けつけ、一夜限りのスペシャルなライブパフォーマンスを披露。現在11名が在籍するメンバーから、パフォーマーのオメガサピエン、ソグム、bjウォンジン、マッド・ザ・スチューデント、ビジュアル・アーティストのホン・チャンヒによるインタビューと、会場が熱気に包まれたライブの映像をお届けする。

Photo
Tsukasa Kudo
Movie
Atsuki Ito
Text
Tomoko Ogawa
Edit
Satoko Muroga(RCKT / Rocket Company*)

―ーBalming Tigerは、映像、ミュージックビデオ、ドキュメンタリー、アートワーク、スタイリングなど、すべてのビジュアル表現において、ユニークで遊び心のあるクリエイティビティを感じさせますが、どうやってこれらの作品を生み出しているのでしょうか。

ホン・チャンヒ チームの中に、基本的に2つ以上のジャンルをこなせる人が多い、ということが大きく影響していると思います。例えば、リーダーのサン・ヤンさんはディレクションに参加したり、ライブに出演したり、スタイリングにも関わったり、メンバーのイ・スホさんはプロデュースもしていて、映像も制作しています。自分もデザインを担当しながら、ステージにも立つこともあります。そもそもBalming Tigerは多くのジャンルに関心があるメンバーが集まっているので、それが全て自然に溶け込んでいるんだと思います。

―ーみなさんの活動の根底には、気楽でオープンで、ある意味ばかばかしさを含んだユーモアもあり、その唯一無二のムードが見る側を巻き込んで楽しませるのだと思います。

オメガサピエン  僕らはお互いに笑いながら冗談を言ったり、ふざけるのが本当に好きなんです。一緒に過ごす時間が楽しいから、そうやって自然にふざけた部分がパフォーマンスや映像、歌に反映されていると思います。

ソグム たぶん、余裕があるからじゃないかなって。Balming Tigerで創作するときに、「かっこよくなければならない」とか「最高に前衛的なものを見せなければならない」という意識はあまりないんです。もちろん楽しさもあるけれど、心に余裕があるからこそ、そういったユーモアを取り入れることができるというか。

マッド・ザ・スチューデント オメガサピエンが言ったように、冗談を言い合ったりはするけれど、基本的には、みんなでパフォーマンスをするエネルギーがあったから集まったのだと考えていて。それが何かは説明しにくいけれど、とにかく僕たちには独自のコードがあって、お互いの信頼がベースになっているので、それを見た人たちはより強い絆みたいなものに感じるんだと思います。


ーー表に立つ人、裏方、役職といった役割分担もそうですし、音楽のジャンルにおいても既存の枠組みを乗り越え、境界を拡張していくようなBalming Tigerの創作について一言で表すとしたらどんな表現になりますか?

bjウォンジン 遊び。 

マッド・ザ・スチューデント 各自が表現したいことはたくさんあるけれど、最終的にそれを一つにまとめるエネルギーが必要だと思っていて。だから、流れですね。

ホン・チャンヒ 音楽をつくるだけでなく、ビデオをつくったり、写真を撮ったり、スタイリングをしたりして、私たちは本当にいい議論をたくさんするんです。いい意味で、対話ですかね。


ーー東京の映像監督Pennackyさんとはいくつものミュージックビデオや短編映画『Moving For Word』などにおいてコラボレーションを続けていますが、Balming Tigerにとって、Pennackyさんはどのような存在ですか?

オメガサピエン 先ほどのマッドの話にあった、僕たちのパフォーマンスのエネルギー、その言葉に表せないような感じを、メンバー全員がPennackyさんにも感じていると思います。僕らが音楽で表現したいビジュアル的なポテンシャルを彼が上手く引き出してくれて、彼の映像における音楽的なポテンシャルを僕らが高めているような。お互いにいいバランスで噛み合っていて、相性がいいと思います。あとは友達だから、それが一番いいところですよね。僕がPennackyと出会ったのは、Balming Tigerに入る前、日本で大学に通っていた頃のことです。当時、僕は一人で音楽をしていて、初めてのミュージックビデオの視聴回数はだいたい800~1000回くらいでした。Pennackyはその動画を見つけて、かっこいいと思って、ライブ公演を見に来たんですよね。つまり、ずっと昔からの関係なんです。その動画がなぜ彼のアルゴリズムに出てきたのか、彼が何を感じたのかはわかりませんが、僕らには通じるものがありました。

ソグム 運命ですね。

ーー2024年4月から渋谷PARCOのBGM監修をされていますが、どのようなプロセスで選曲をされたのでしょうか?

ソグム 4つの季節分の私たちのプレイリストをつくるということで、1人当たり25曲ずつ選び、4、5人で1つの季節を担当しました。春夏秋冬に分けたのですが、そんなに話し合わなくても、大きな問題なくいい感じにマッチしたかなと。例えば、春を担当したメンバーは春の、それぞれの季節に対して持つイメージが似通っていたのだと思いますね。

ホン・チャンヒ  季節に合わせてみんなが選んだものを集めて、そこからちょっと合わない曲があれば外して、もっと合う曲に差し替えるという感じでプレイリストをつくっていきました。

bjウォンジン 少し前のことなので、正直詳しくは覚えていませんが、僕らの中ですごく慎重に確認を取り合った記憶はありますね。

ーー渋谷PARCOのビルの中で出会う曲という点から意識したことはありますか?

マッド・ザ・スチューデント PARCOは歴史のあるデパートでありながら、今でも若々しい感じがあるじゃないですか。だから選曲するときも、昔の曲と最近の曲を分けることなく、調和のとれる曲を混ぜながら選んでいきました。

ソグム 私は春を担当したので、「花が咲く遊園地」のような感じをイメージしました。PARCOでは、年齢に関係なくみんなが子どもの頃に戻ったような、花畑で遊んでいるような、時間を忘れて幸せな時間を過ごしてほしい、という思いでつくったのですが、すごく楽しい作業でした。

ーーPARCOに持っていた印象があれば聞かせてください。

ホン・チャンヒ  僕が好きなグラフィックデザイナーの井上嗣也さんは、80年代から90年代のPARCOの広告をたくさん手掛けていた方なんですが、彼の広告ビジュアルを見たときにすごくいいなと思ったので、PARCOと聞くとその広告が思い浮かびますね。

ソグム 芸術的なものを独自に解釈して追求し、時代の流れにも上手く合わせ、たくさんの人々に愛され続けている場所ですよね。去年の夏、友達と渋谷PARCOに行ったときに、私はスリッパを履いていて、1階にあるCOMME des GARÇONS GIRLで、すごくかわいいピンク色のVANSとのコラボスニーカーを買ったんです。私は色のある靴をあまり履かないんですけど、PARCOに来て、なんだか引き寄せられるように、自分の中で別の自分が目覚めるような感じがあったことが印象に残っています。

ーーやはりBalming Tigerの活動において一番エキサイティングな体験を観客に与えてくれるのは、ライブだと思います。世界でツアーをし、ライブを重ねることの喜びとは?

オメガサピエン ステージでは、とにかく多くの人が僕らがやっていることを見ているじゃないですか。でも、自分にとっては、最も真実的な瞬間だと思っています。ライブをしているとき、その瞬間がすごく好きです。

bjウォンジン  ツアーを長く続けていると、ときには飽きてしまうこともあって。でも、ステージに上がる前に、みんなで祈る時間があるんです。そのときの、みんなが調和する感じはいつもいいものです。

マッド・ザ・スチューデント  昔は小さなライブにもたくさん出たし、近年は大きいライブにもたくさん出ましたが、規模が違っても、心構えはだいたい同じだと思ってます。ステージに立つとき、メンバーと一緒にパフォーマンスをするのことが楽しくて。その楽しさが、一番大きな原動力になってます。

ホン・チャンヒ ツアーをすると、新しい場所に行って新しい空気を吸い、新しい服を着たり、新しいトラックでパフォーマンスをしたり、そういった新しい経験を頻繁にできることは幸福だなと感じています。

ソグム  ツアーを2、3年一緒にまわりながら、いつも口にしていた言葉が二つあります。一つは「一歩ずつ」、もう一つは「危機をチャンスに」。ツアーでは、何かが一気に飛び跳ねることはなくて、いつも一歩一歩進んでいかなければならない状況なんです。実際、数えきれないほどの危機があったので。荷物がなくなるとか、ライブ前にメンバーが飛行機に乗れないとか。そういった状況でも、危機をチャンスに変える方法をたくさん学びました。ツアーを通じて、またコンサートをつくっていく中で、ますます強くなって、みんなが一つになっていくのを実感しています。

Balming Tiger, a South Korean musical collective, identifies as an alternative K-pop band and is gaining worldwide attention for its energetic performances and one-of-a-kind, addictive sound and vision. Since April 2024, the musical collective has been the background music selector at Shibuya Parco. In November, the collective attended the opening party for the fifth anniversary event celebrating the renewal of Shibuya Parco and gave a special one-night-only live performance. Among the eleven current members of the band, performers Omega Sapien, sogumm, bj wnjn, Mudd the student, and visual artist Chanhee Hong sat down for an interview. In addition to the interview, we are sharing footage from the live performance that electrified the venue.

- Balming Tiger’s visual expressions span videos, music videos, documentaries, artworks, styling, and more and are infused with a distinct, playful creativity. How do you create such unique productions?

Chanhee Hong: I believe this is largely because our team includes many members who can comfortably handle multiple genres. For example, our leader San Yawn is involved in directing, performing live, and styling, while the member Leesuho takes part in the production and creation of videos. I am also in charge of design and occasionally take the stage as well. In the beginning, people with an interest in multiple genres joined Balming Tiger, and their skills have naturally blended together.

- Your activities are rooted in a relaxed, open-minded, and somewhat silly sense of humor. That unique vibe has created an atmosphere that captivates and entertains the audience.

Omega Sapien: We truly enjoy laughing, joking, and goofing around together. We have so much fun hanging out with each other, so our playful nature and light-hearted vibes naturally come through in our performances, videos, and songs.

sogumm: I believe it’s because we have extra mental space. When I take part in a creative project as a member of Balming Tiger, I feel no pressure to be cool or showcase the most avant-garde parts of the work. Of course, I find it enjoyable, but I believe it’s because I have enough mental space that I can incorporate humor into the work.

Mudd the student: As Omega Sapien said, we joke around, but the main reason we came together as a group was our shared energy for performing. It's hard to describe, but we have our own code built on mutual trust, and our audience senses the strong mutual connection that we share.

- In one word, how would you describe Balming Tiger's creative works, which transcend conventional boundaries by redefining roles like performers and background staff as well as musical genres?

bj wnjn: "Playful."

Mudd the student: Each of us has many ideas that we want to express, and I believe it takes effort and energy to bring them together and shape them into the final work. So, I would say, "flow."

Chanhee Hong: We go through many meaningful discussions, not only while making music but also while creating videos, taking photos, and developing our style. So, I would say, "dialogue" in a good way.

- Balming Tiger and Pennacky, a Tokyo-based movie director, collaborated on numerous music videos and the short film, Moving For Word. To Balming Tiger, what presence does Pennacky have?

Omega Sapien: Mudd just mentioned the indescribable energy of our performance. All the members of Balming Tiger feel that same sense of energy from Pennacky. He is very good at bringing out the visual potential that we wanted to express in our music, and in turn, we can enhance the musical potential of his movies. We click very well with each other in a good balance. We are a good match, and above all, we are good friends. That is the best part. I first met Pennacky when I was a college student in Japan before joining Balming Tiger. At that time, I was making music on my own, and my first music video only had around 800 to 1,000 views. Pennacky saw that video, liked it, and came to watch my live performance. In other words, our relationship goes way back. I’m not sure how my video ended up being suggested to Pennacky through the algorithm or what he thought when he watched it, but I think there was something about it that created a connection.

sogumm: It's fate.

- You have been supervising the background music for Shibuya Parco since April 2024. What process do you go through to select music for Parco?

sogumm: Our task was to create playlists for the four seasons. First, we each selected 25 songs. Then, we formed four groups of four to five members with each group responsible for creating a playlist for a specific season. We divided the members into groups responsible for the spring, summer, autumn, and winter. Without much discussion, we created playlists that seamlessly matched each season without any major issues. For example, the members assigned to spring shared similar ideas about the season, and this held true for the groups assigned to the other seasons as well.

Chanhee Hong: We started by gathering and selecting songs for a specific season. Then, we removed the songs that didn’t fit and replaced them with tracks more appropriate for the season. This is how we created the playlist.


bj wnjn: Honestly, I don’t remember all the details of the process since it was a while ago. But I do remember carefully and thoroughly checking and discussing each song as they were selected.

- Were you especially mindful when selecting songs while keeping in mind that customers would hear them in the Shibuya Parco building?

Mudd the student: Parco is a department store with a long history, yet it still has a youthful feel, doesn’t it? Therefore, when selecting songs, we didn’t separate old songs from more recent ones; we blended them together to create a harmonious mix.

sogumm: I was assigned to spring, so I chose songs that matched the mental image of an amusement park where flowers bloom. I wanted shoppers to feel as though they were reliving their childhoods while shopping in Parco—as if they were playing in a flower garden and losing track of time. It was a very enjoyable process.

- Please share your impression of Parco, if any.

Chanhee Hong: Tsuguya Inoue is my favorite graphic designer, who created many of the iconic ads for Parco in the 80s and 90s. I really enjoy his ad visuals, and whenever I hear the name Parco, I immediately think of the ads he created.

sogumm: Parco is a place that has been loved by many people for its unique interpretation of artistic items and its ability to stay connected to the ever-changing trends of the times. Last summer, when I visited Shibuya Parco with friends, I was wearing slippers. On the ground floor at Comme des Garçons Girl store, I discovered and bought a super cute pair of pink sneakers, a collaboration with Vans. I don’t usually wear colorful shoes, but I distinctly remember being at Parco on that day, I was drawn to that pair and couldn’t resist; it was as if some unseen force was leading me toward them. It felt like a different version of myself was awakening inside.

- Among your variety of activities as Balming Tiger, live performances are when you deliver the most exciting experience for your audience. What do you consider as the joy of touring and performing live around the world?

Omega Sapien: When we are on stage, so many people are watching what we’re doing. I believe that is the most authentic moment for me. I really enjoy those moments when I’m performing live.

bj wnjn: Sometimes I become bored when touring for a long time. But before we go on stage, we take a moment to pray together. It is always comforting to feel that everyone is in harmony at that time.

Mudd the student: We used to perform live on smaller stages a lot. In recent years, we have been performing live on many larger stages. Regardless of the size of the stage, our mindset stays consistent. I enjoy performing alongside the other members when I’m on stage. That enjoyment is the biggest motivation.

Chanhee Hong: When we are on tour, I am happy to be able to constantly experience new things—visiting new places and breathing in new kinds of air, wearing new outfits, and performing new tracks.

sogumm: I always said two phrases while touring with these members for two to three years: "One step at a time," and "Turning a crisis into an opportunity." While on tour, nothing ever happens as a sudden leap forward all at once. So, we must steadily make gradual progress step by step. In fact, we have faced so many crises that I’ve lost count. We have faced the crises of lost luggage or members missing a flight before a live concert. Through those situations, I learned a lot about how to turn a crisis into an opportunity. Through our experience on tour and creating concerts, we have grown stronger than ever and become more united.

Balming Tiger


アジアの有名な軟膏「タイガーバーム」からその名を取った、多様なオルタナティブK-POPグループ。アジアンアートカルチャー&コレクティブ。パフォーマーのOmega Sapien、sogumm、Bj wnjn、Mudd the student、プロデューサーのSan YawnとUnsinkable、ビデオ監督のJan' quiとLeesuho、ビジュアルアーティストのHong Chanhee、DJ Abyss、ライターHenson Hwangからなる集団。各アーティストが異なる芸術的アイデンティティとエネルギーを表現しながら、時代を作品に投影するという創作のビジョンを持つ。2023年、Rolling Stone誌により今年注目すべきミュージシャンに選定され、フジロックフェスティバルへの出演を皮切りに、ワールドツアーをスタートして成功裏に終えた。European Festival Awardsで今年の新人賞を受賞し、1stアルバム『January Never Dies』の収録曲を土台に製作した短編映画『Moving For Word』を公開。2024年4月から渋谷PARCOのBGM監修を務め、2ヵ月ごと、1年間で全6回のプレイリストを展開中。

A diverse alternative K-Pop group named after the famous Asian ointment Tiger Balm. An Asian art culture and collective. The group consists of performers Omega Sapien, sogumm, bj wnjn, and Mudd the student, producers San Yawn and Unsinkable, video directors Jan' Qui and Leesuho, visual artists Chanhee Hong and DJ Abyss, and writer Henson Hwang. Their creative vision is to infuse their productions with the vibes of the times with each artist contributing a unique artistic identity and energy to the group's artistic expression. In 2023, the group was selected by Rolling Stone magazine as artists to watch this year, and they successfully completed a world tour, starting with an appearance at the Fuji Rock Festival. The group won this year’s Newcomer of the Year award at the European Festival Awards. They also released the short film Moving For Word, inspired by the songs from their first album January Never Dies. Since April 2024, the group has been curating the background music at Shibuya Parco and is currently creating a new playlist every two months for a total of six playlists throughout the year.


https://www.balmingtiger.com
Instagram(@balmingtiger

前のページ
1 / 1
次のページ
  • LINE

Other Posts