ファッションブランド「TOGA」と共に制作するPARCO ISSUEのテーマは「QUEER CULTURE(クィア・カルチャー)」。ジェンダーマイノリティーを起点に音楽、映画、アート、文学など幅広いジャンルに広がるクィアという文化を、ファッションとカルチャーという二つの側面から見つめます。
古田泰子(TOGAデザイナー)、五所純子(作家、文筆家)、斎藤玲児(映像作家)、Yiqing 逸青(DJ、オーガナイザー)という性別、世代、文化背景の異なる4名のゲストが登場し、それぞれの視点から“クィア” について語ります。
そして「TOGA」新作コレクションを纏ったゲストを、塩田正幸、当山礼子、Ryu Ika、ニールス・ジュンジ・エドストロームという4名の写真家がファッションポートレイトとして撮り下ろしました。
- Creative Direction & Edit
- Akira Takamiya(Moder—n)
- Photography
- Masayuki Shioda,
────Reiko Toyama,
────Ryu Ika,
────Nils Junji Edström
- Film Direction
- Taro Okagawa
- Interview & Text
- Nozomi Kinoshita,
────Yui Nogiwa
────(RCKT/Rocket Company*)

Interview | Yasuko Furuta
些細な変化が、世界を変える。相手に寄り添う“TOO”の感覚
Photographed by Reiko Toyama
既成概念にとらわれず、音楽やアートなど、さまざまなカルチャーとの融合により、独自の美学を表現し続けているTOGA。ジェンダーの様式美を体現したコレクションをはじめ、さまざまな人々に寄り添うユニセックスラインを展開するなど、あらゆる「個」を包み込む姿勢が魅力だ。来年、ブランド設立30周年を迎えるTOGAのデザイナー・古田泰子に「境界を超える」ということについて聞いた。



――今回のPARCO ISSUEのテーマ「QUEER CULTURE」のオファーを受けたときに、率直にどう感じましたか?
この企画に誰か一人でも当事者の参加があるのかが気になりました。私自身は当事者ではありません。ですが自分が何を話せるのか。ゲストを招きTOGAを着てもらうとのことだったので表層的に終わらないようにできるか? と思ったのが率直な感想でした。
――「QUEER(クィア)」は、広く考えると枠にとらわれない姿勢や、既存の価値観を考え直すこと、境界線を曖昧にすることなど、いろんな意味で捉えられる言葉だと思います。
私は境界線を曖昧にせず、はっきりさせた方が良いと思っています。なにが境界線なのか、すでに不自由を受けている人のこと、不自由を感じている感覚や何かしらの違和感を具体的に伝えること、声にすることを大事として良いと思っています。繰り返し考えていくことで、見えてくるものがあります。相手との境界線をはっきりさせたいということではなく、曖昧で生まれる不確かさや偏見を減らしたいと思っているから。既存の価値観を考え直すためには、当事者の本を読み、クィアについて学ぶことが必要だと思っています。それは、服作りにも大きく影響します。


――古田さん自身は、明確になった境界線を越えるということを意識されているのでしょうか?
特に服を作っている最中は、境界線が何かわからないと「超える」ことはできないですから、不透明さをはっきりさせていく過程に意味があると思っています。30年前に服を作り始めたときと今とでは、大きく環境が変わっていると感じます。今はデザインの良し悪しのみの判断だけではなく、作り手側の意思、制作工程などを踏まえ、それに賛同できるか。そして購入に至る。そういう意味では物質としてのデザインの境界は超えたいと思っています。
何を考えているかは制作物を見てくれたらいいとか、言葉にできないから作っているという一面もありますが、特に女性が理論的に掘り下げ、討論に参加しようとすると面倒がられるという時代があったと思います。さまざまな状況におかれる人を想像し、話し合えるのもいいですが、当事者に耳を傾ける機会が増えることが大事だと思います。LGBTQ+の話も含め、マイノリティの考えをメディアが報じるのは世の中がいい方向に変わってきていると思います。
――TOGAは、2017年の20周年記念のショーで、ジェンダーを超えたスタイリングが話題になりました。10年ほど前に、ジェンダーの垣根を超えるというアプローチをされていたのは早い方だと思うのですが、きっかけはあったのでしょうか?
もともとTOGAには女性服、男性服といったカテゴライズではなく、このデザインが着たいとお店に足を運んでくれるお客様が多いです。私はメンズ、ウィメンズそれぞれが持つ歴史ある伝統様式美にも影響を受けて服を作っていますが、お客様には自由でいてもらいたい。そんなとき、同じコレクションをロンドン、東京の2都市で発表したシーズンがあり、方向性が全く異なる二人のスタイリストと仕事する機会に恵まれました。ロンドンのスタイリストから受けた提案は、働くキャリア女性に向けたスタイリング。日本では男女を混ぜ性別を超えたスタイリング提案をもらい、彼らの考えに触れたことが大きな転機となりました。私はどちらの考えも受け入れるTOGAの服の良さに気づきました。発表する段階で私たちがカテゴリーの枠にはめて、制限してしまっていることに気がついたのです。あのとき、ダイバーシティーを体現したいという思いより、どちらかというと自分たちの考えの狭さを解き放したいと考えていました。


――2024年にリローンチした、ユニセックスラインTOGA TOOのネーミングも素敵ですよね。
バイヤーさんから「メンズ売り場のバイヤーなので、ウィメンズ服は買えません」と言われたときに、自分たちからカテゴリーを狭めているのではないかと感じたことがきっかけに「ユニセックス」や「ジェンダーレス」だけでは決められない“お互いを共有する”という意味を込め「TOO」と名前をつけたラインを始めました。すると、そのジェンダーの壁がなくなり、バイヤーさんがカテゴリーなしで買い付けできる環境になりました。服作りのコンセプトを変えなくともそれだけで大きく変わる。「TOO」は言葉として理解しやすく、“お互いに寄り添う”感覚があり、私たちの考えにぴったりだと思っています。
――ユニセックスとか、ジェンダー的な意味合いを超えた何かを感じます。
気持ちを共有する、という意味も込めています。賛同するだけのTOOでなく、相手に寄り添うという良い意味を持つ言葉です。TOO ではサイズ展開の幅を多く持つことで選択の枠を広げています。


――一般的にユニセックスアイテムと聞くと、Tシャツやスウェットなど、ベーシックなアイテムを想像しますが、TOGA TOOのアイテムのバリエーションが広いですよね。他のラインとはどのようにすみ分けされているのでしょうか?
自分が自分らしくいられる格好で働けることは健康的だと思っています。ファッションの世界で働いている私たちは、それだけでも幸せに感じています。世の中には自分の趣味嗜好だけでなく、性別を隠して働いている方も多いと思います。未だに女性だとノースリーブ禁止など肌の露出制限があったり、ヒール着用必須といったり。仕事で訪れた海外の工場ではそれぞれが個性ある服や好きな化粧をして働く姿を見ました。8cmはあるだろうと思うネイルをしたバスの男性運転手もいました。もちろん国ごとの職種のルールによるところもあると思いますが、私も含め社会に決められた職業イメージからジェンダーに至るまで枠がなくなり、どんな人でも自分の好きな格好で働ける環境が訪れてほしいと思っています。実際に長く続いている先入観を変えるのは難しいですが、TOGAではいろんなパーソナリティやオケージョンを想像し、ファッションに興味を強く持ち、より挑戦したい人たちに向けたTOGAやTOGA TOOのようなベーシックなラインまで提案しています。

――最後に、クィアという言葉に対して、古田さんが抱く印象や、どのように響くかお聞きしたいです。
私がはじめてクィアという言葉にふれたのは、20 年前にミュージシャンのアルカが表紙を飾った雑誌で、アルカのカットした髪の毛で「QUEER」と顔に描かれた写真でした。
そこではじめてクィアという言葉が性的マイノリティの人たちを指すと知りました。当時の“クィア=変わっている”というマイノリティへの言葉から、クィアを公表していくというのはひとつの大きな決断だったと思います。今後は、それに賛同することが解放と自由を求める強い意思を表す賛美の言葉に変わっていくのではないかと思っています。

Profile — Yasuko Furuta
古田泰子(ふるた・やすこ)
1997 年にTOGA を立ち上げる。1999 年より展示会形式で発表。2001-02 年秋冬に東京コレクションデビューし、2006 年よりパリコレクションに参加。2003 年に毎日ファッション大賞新人賞・資生堂奨励賞、2018 年に大賞を受賞。2014 年からは発表の場をロンドンに移す。来年2027 年にはブランド設立30 周年を迎える。

- ショップ名
- TOGA
- フロア
- 2F
- 電話番号
- 03-6416-9688
- 公式ブランドサイト
- https://store.toga.jp/
- 公式SNS
- Instagram(@togaarchives)
Check here too>>
TOGA | “OUR, QUEER, CULTURE” (2/2)




