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Interview上出遼平×阿部裕介×仲野太賀|MIDNIGHT PIZZA CLUBが語る、僕らの「地球の歩き方」と渋谷PARCOという終着点。

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Interview上出遼平×阿部裕介×仲野太賀|MIDNIGHT PIZZA CLUBが語る、僕らの「地球の歩き方」と渋谷PARCOという終着点。
Interview上出遼平×阿部裕介×仲野太賀|MIDNIGHT PIZZA CLUBが語る、僕らの「地球の歩き方」と渋谷PARCOという終着点。

世界で最も美しい谷と言われる、ネパール・ランタン谷から始まった3人の旅。TVディレクター・上出遼平、写真家・阿部裕介、俳優・仲野太賀によって結成された旅サークル「MIDNIGHT PIZZA CLUB」は、記録としての本を超え、Audible、展覧会へと広がりながら、多くの人を巻き込むプロジェクトへと成長してきた。
そんな彼らが今回、渋谷PARCOでの展覧会とポップアップショップというかたちで、「ひとつめの旅の終着点」を提示する。なぜ彼らの旅はこれほど多くの人を魅了するのか? 彼らにとって「旅」とは何なのか? プロジェクトの軌跡と裏側、そして今回の展覧会に込めた思いについて話を聞いた。

Photo
Asami Minami
Text
Risako Hayashi
Edit
RCKT/Rocket Company*

── 今回、GALLERY X BY PARCOでの展覧会と、DAIROKKANでのポップアップショップという2つの企画が開催されると伺いました。まずはその成り立ちや、これまでの活動についてお聞きしたいです。2024年に発売された本(『MIDNIGHT PIZZA CLUB 1st BLAZE LANGTANG VALLEY』)を拝読したのですが、上出さんの一人称視点で語られる旅のエッセイでありながら、3人のキャラクターが際立っていて、まるでエンタメ小説のような構造に驚きました。そもそも、ニューヨークで「3人で旅をしよう」と決めた当初から、こうした本やAudible、展覧会、ポップアップといった展開は見据えていたのでしょうか。

上出遼平(以下、上出) 最初からすべて決まっていたわけではないですね。ただ、音は録っていたし、写真はみんな撮っていたので、何かしらの形にしようという話はありました。3人とも本が好きだったので、「本にしたいよね」というぼんやりした思いはあったんです。

阿部裕介(以下、阿部) ネパールの谷を歩きながら、宿に着くと時間がたっぷりあるんですよ。そこで「どんなアウトプットがいいか」と、いろいろ話し合いましたね。「こんなのがいい」「あんなのがいい」って。

上出 最終的には「俺たちなりの『地球の歩き方』にしよう」と言って仕上がったのが、この本です。

── その「地球の歩き方」というキーワードは、どなたが最初に出されたんですか?

上出 僕です。

仲野太賀(以下、仲野) いや、俺です。

阿部 僕ですね。

上出 まあ、ほぼ同時ということで。ただ記事上は僕って書いてもらって構わないかなと(笑)。それは置いといても、みんなやっぱり『地球の歩き方』を読んで育ってきた世代なんですよね。掲載されている写真も、決して気取っていないんだけど、なぜかすごく印象に残る。あれってなんだかんだ言って、旅の原体験として「良いもの」として残っている。だからこの本も、旅に出たいなと少しでも思った人が、手に取ってくれるようなものにしたかったんです。

── 準備段階から3人のなかで役割分担はあったのでしょうか。

上出 旅の準備に関しては阿部ちゃんが全部やってくれました。役割分担どころか、「分担しなかった」というのが正解かもしれない。スケジュールから行き先まで、全部阿部ちゃん。ネパールのランタン谷という場所が阿部ちゃんの馴染みの場所で、「俺が二人を連れていきたい」という“阿部プレゼンツ”の旅だったんです。
でも相当大変だったでしょうね。僕なんて、ニューヨークから手ぶらで入ってますから。山登りの道具も、靴も、バックパックもなし。「阿部ちゃん、俺の道具ある?」みたいな(笑)。

阿部 スーツケース2個分、パンパンに詰めて持っていきましたよ。ずっと文句言ってましたけど(笑)。でも、あの時は本当にバタバタしていて記憶があんまりないんです。今だったら、もうちょっとうまくできる気がする。

上出 僕と太賀くんに関しては、そもそもどこに行くのかすらよく分かってなかった(笑)。何も調べてなかったよね。

仲野 全く調べてないです。目的地の村「キャンジン・ゴンパ」のこともカンジャンケジャンってずっと言って(笑)。場所の名前すら、行くまで覚えられなかった。

── 不安にはならなかったんですか?

仲野 阿部ちゃんが何度も通っている場所だったので、不安要素はなかったですね。ただ、高山病にならないよう高所トレーニングだけはしました。標高4000メートル近くまで行くので、トレーニングセンターに、僕と阿部ちゃんで2回通いました。でも、このプロジェクトが始まったのが2023年だから、もうだいぶ前のことで記憶があんまり……。

── 本もすでにかなり重版を重ねているとか。すごい反響ですね。テキスト、写真、演者というそれぞれの得意分野を活かしながらのアウトプットだったと思いますが、この3人だからこそ見えてきたものはありますか?

阿部 僕にとって明確だったのは、「旅と写真」に対する価値観の変化です。学生時代からずっとやってきたことなので、自分のスタイルはもう変わらないだろうという自信があった。でも、あの旅での「ビール事件」が大きかった。

上出 ビール事件ね。

阿部 僕のルールでは、旅は「安く、我慢しながらするもの」だったんです。でも太賀くんが「いちばん楽しい感じにしようよ」と言い出して。そこで一度、価値観がぶっ壊された(笑)。それから旅の仕方が本当に変わったんです。お酒を飲みたくなったら、無理に我慢せず楽しむ。写真の撮り方も、かなり影響を受けました。

上出 3人ともそれなりの数の旅をこなしてきて、それぞれのスタイルが確立されているんですね。その3人が集まって一緒に旅をするっていうのが面白かったですね。
阿部ちゃんは意外と繊細で、嫌なことが起きてほしくないし、体調も崩したくない。だから「この地域ではこの料理が自分に合う」と決めたら、ずっとそれを食べ続ける。一方で僕は、経験したことがないことをひとつでも多く経験したいから、毎日違うものを食べたい。太賀くんはとにかくグルメで、食事は必ず美味しくあらねばならない。そういう、楽しみ方や優先順位がバラバラなのがとにかく面白かったですね。

仲野 僕はあんまり自分で考えたことなかったんですが、意外な気づきがありました。「俺、どこでも寝れるんだな」って。

上出 いや、本当そう。僕と阿部ちゃんは睡眠環境にすごく繊細で、少しでも環境が悪いと寝られなくなっちゃう。それなのに太賀くんは一瞬で眠りにつく。それなのに、一人部屋を取ろうとする。それは人として……まああんまりはっきりは言いたくないですけど、そういうのが見えちゃう(笑)。

阿部 上出さんと僕は、どっちかというと裏方タイプなんですよ。だから、同じテントとかで寝ると、相手に気を使いすぎて動けなくなる。

上出 そうそう。阿部ちゃんと一緒だと「俺がいびきかいたらどうしよう」とか「寝返り打ったら響くかな」とか考えちゃう。でも太賀くんと一緒だと、彼が速攻でいびきかいて寝てくれるから、「ああ、俺が多少ごそごそしても気づかないな」って安心できるんです。

仲野 二人からは「どこでも寝れるんだから、お前は旅に向いてるよ」ってずっと言われます(笑)。僕からすれば、二人は山の知識も技術もすごいから、いろいろ教えてもらってばかりだったんですけど。
技術的な面でも、二人の意見が真逆で面白かったんですよ。例えば「崖道を歩くとき、ストック(杖)は谷側と山側、どっちにつくべきか」。

上出 流派が違うんですよ。

仲野 阿部ちゃんは「谷側」って言うんです。「山側には岩が多いから、そこを突くと反動で谷に落ちるから」と。納得感ありますよね。でも上出さんに聞くと「山側」だと。「谷側の地面は脆いから、スコーンと抜けたらそのまま落ちる」って。

── どっちも正論ですね。

仲野 だから僕は、交互にやっていました(笑)。寝るときの格好も、上出さんは「寒い時は暖かい服を着て寝袋に入れ」と言うし、阿部ちゃんは「裸に近い薄着で入れ。そうすると自分の体温が寝袋の中で回るし、朝起きた時に服を着ればもっと温かくなる」と言う。

阿部 上出さんの言う通りにしてたら、本当に低体温症になっちゃうかもしれないですよ。

上出 いや、これ実は「裸派」の流派も確かにあるんだけど、条件によるんですよね。この話を始めたら長くなるからやめるけど。

仲野 結局僕は、寒い時は着る。暑い時は脱ぐ。至極当たり前の結論に至りました(笑)。

「MPCのグッズは普段から愛用している」と太賀さん。この日もキャップとTシャツを着用していた。

── 他人と過ごすことで自分のクセにも気づけますね。写真や文章といったアウトプットについても伺いたいのですが、阿部さんはプロの写真家として、太賀さんの写真をどう見ていたのでしょうか。

阿部 太賀くんが撮っているものを見たとき「あ、これ撮ってくれるなら、俺は撮らなくていいな」って思えた。だから揉めることは全くなかったです。僕は写真のプロとして行っているけれど、むしろ太賀くんにしか撮れない写真がある。
最近、出来上がったものを見返して衝撃を受けて。僕は何度もネパールに行ってるので、例えば電信柱とか、お坊さんとか、鳩とかは撮らないんですが、そういう何気ないものが太賀くんの視点で切り取られている。それにすごく刺激を受けました。「こんな一面があったんだ」って。2度旅を楽しめる感覚です。

── 阿部さんは、太賀さんのプロのカメラマンではない視点を参考にされていると。

阿部 そうですね。プロはどうしても「本を作るために押さえておくべきカット」を知ってしまっている。でも、自由な視点の方が圧倒的に面白いことがあるんです。それから仕事での写真の撮り方も変わりましたね。「撮りたいものだけ撮る」ようになりました。

── 上出さんは普段の仕事において、旅を経たことで変わったことはありますか?

上出 僕は文章に関しては、今回すごく自由に書かせてもらいました。実在する人間(阿部・太賀)を描いているのに、「嘘をついても許されそう」な関係性ってなかなかない。最近の旅の本って、ライトなエッセイか、ハードコアな記録か、極端に振れている気がして。冗談交じりの、『深夜特急』のような道中記がなかなかなかった。
自分がいちばん好きなジャンルを、この3人なら実現できる。実際にアウトプットして、多くの人が喜んでくれたことで「これでいいんだ」という安心感を得られました。
それと僕は執筆と編集の権利だけは絶対に手放さないということは決めてます。最終的なアウトプットを自分でコントロールしないと、何が起こるかわからないので。

仲野 結構ヒリヒリしますよ。完全にプライベートな時間だから、フィルターがないんですよ。ずっと上出さんのボイスレコーダーが回っているのに、10日間も一緒にいると意識しなくなっちゃって、余計なことばかり言っちゃうんです。
でも、本が出てから、阿部ちゃんと僕、ちょっと口数減ったよね?(笑)

阿部 減ったね(笑)。何か言おうとした瞬間に「あ、これ書かれるな」ってブレーキがかかる。僕の口癖の「実際」って言うとまた上出さんにイジられるから、別の言い回しを日本語でも英語でも練習したり。

上出 そのくらいの呪いをかけてしまったんですね。まあそれも含めて人間味があっていいと思いますよ。相変わらず、言っちゃいけないことばかり言ってますけどね。

── 渋谷PARCOでの展示についても伺わせてください。今回のGALLERY Xでの展示や、magmaさんとのコラボによるポップアップは、どのように決まったのでしょうか?

阿部 もともと「会員証を発行したい」という話があったんです。山のゲストハウスにパスポートの写真がバーっと貼ってあるようなイメージで。

上出 「免許証みたいなのを作ろうよ」と言い出したのは僕です。事の発端は、山梨にあるGASBON METABOLISMというギャラリーで展示をした際、パルコの方と繋いでいただいたのがきっかけですね。

仲野 いつもと違う展示をしたいねと。GASBONのときは、「PIZZABON」というタイトルで、3人それぞれの景色を見せるのがMPCだろっていうテーマでやっていたんですが、せっかくだったら違うことしたいなと。東京、京都、福岡と写真展を巡回してきましたが、PARCOでやるならこれまでと同じことをしても誰も納得しないだろうと。

上出 1冊目の本のプロジェクトとして、今回をフィナーレにしようと決めました。だから、これまで楽しんでくれた人たちに、MPCの「会員証」を渡すのが面白いんじゃないかと。それがGALLERY Xの企画。
そしてDAIROKKANでは「お土産屋さん」をやります。僕ら、旅の最後にお土産屋さんに行くのが大好きなんです。この『MIDNIGHT PIZZA CLUB』という旅に同行してくれた読者の皆さんが、最後に立ち寄れる場所を作ろうということで。

「こういうのもいいね」と阿部さん。この日訪れた、今年3月に渋谷PARCO ZEROGATE B1Fにオープンした本とアートの複合スペース「NONLECTURE books/arts」では、さまざまなアートブックを手に取りアイデアを収集していた。

── magmaさんとのコラボレーションも楽しみです。

上出 これは僕のエゴです。僕がmagmaさんの大ファンで。彼らが以前、ピザのキーホルダーを作っていたのを見て「これは匂わせだな」と勝手に解釈して声をかけました。

仲野 オブジェやキーホルダー、Tシャツなど、フルボリュームで協力していただいています。会場設計もmagmaさんにお願いしているので、今までの「写真を静かに見る展示」とは全く違う、3次元の空間になります。

阿部 僕も正直、ただ写真を並べるだけの展示には飽きていた部分があって(笑)。写真を写真として恭しく扱わないような、magmaさんのような人に壊してほしかった。

上出 自分たちを「大切にされたくない」という瞬間が、僕らにはあるんですね。

阿部 上出さんのこういう笑かしにかかるという感覚が好きになっちゃって、写真をそのまま見せたくないという気持ちになったのかなと。

「NONLECTURE books/arts」のメインのスペースでは、5月10日(日)まで、特殊ポスターショップ 「SOONER OR LATERインポート・カルチャーポスターズ」のポップアップが開催中。 メインスペースの奥には、バーガンディ色の床が目を惹く「Goldwin Room」が。アウトドア・スポーツアパレルブランド、ゴールドウインの哲学になぞらえた、自然や素材、身体、思想を横断する写真集やエッセイ、実践的ガイドなどが選書されるほか、写真家・柏田テツヲ氏の展示も開催中。『MIDNIGHT PIZZA CLUB 1st BLAZE LANGTANG VALLEY』も並ぶ。

── 渋谷PARCOという、カルチャーの発信地のような場所で展示を行うことへの期待はありますか?

仲野 普段僕たちのことを知らない人の目に触れる機会になれば嬉しいです。渋谷のど真ん中で、これだけふざけた、でも本気で作ったプロジェクトを展開できるのは誇らしいことだと思います。

── 最後に、これから「会員」になる方々や、読者の皆さんにメッセージをお願いします。

阿部 このプロジェクトをきっかけに、また誰かが旅に出てくれたらいいなと思います。展示に来た人同士が仲良くなったりするのを見るのも楽しいんですよね。

上出 この本を読んで、実際に同じルートを旅してくれる人がたくさんいてくれて、本当に嬉しいです。旅って本当に素敵なんですよ。もっとみんなにしてほしい。旅が世界を救うとさえ思っています。
みんなが旅をしたら、戦争はなくなりますよ。知らない世界に、いろんな人がいることを知る。それがいちばん素晴らしいことですから。

仲野 僕は、この活動を通じて「俳優業ではない仕事」をやる楽しさを知りました。友達との旅が形になって、誰かの目に触れる。この活動自体が僕の人生におけるひとつの「旅」のような気がしています。いろんな旅のかたちがあると思うので、この本や展示が、誰かの新しい旅のきっかけになれば、それ以上に嬉しいことはありません。


Information

MIDNIGHT PARCO / PIZZA CLUB

会場
第1弾 会員証発行所:GALLERY X BY PARCO(渋谷PARCO B1F)
第2弾 MPCアンテナショップ:DAIROKKAN(渋谷PARCO 1F)

開催期間
第1弾 MPC会員証発行所:2026年4月24日(金)〜5月6日(水)
第2弾 MPCアンテナショップ:2026年5月27日(水)〜6月7日(日)

主催
パルコ

企画・制作
MIDNIGHT PIZZA CLUB、パルコ

Official website
https://art.parco.jp/galleryx/detail/?id=1912

Official SNS
Instagram(@parcogx)  X(@parco_x

Special Thanks
ショップ名:NONLECTURE books/arts
フロア:ZEROGATE B1F
Official HP:https://nonlecture.jp/
Official Instagram:https://www.instagram.com/nonlecture_books_arts/

MIDNIGHT PIZZA CLUB(ミッドナイト・ピッツァ・クラブ)

MIDNIGHT PIZZA CLUB(ミッドナイト・ピッツァ・クラブ)

TVディレクター・上出遼平、写真家・阿部裕介、俳優・仲野太賀によって結成された旅サークル。通称「MPC」。2024年12月、3人で訪れたネパールの旅路を綴った『MIDNIGHT PIZZA CLUB 1st BLAZE LANGTANG VALLEY』(講談社)を刊行し、旅を愛する人、旅するマインドを愛する人々に影響を与えている。音声で臨場感のある旅のムードを楽しめるポッドキャスト「MIDNIGHT PIZZA CLUB」をAudibleにて配信中。現地で撮り溜めた写真の展示やオリジナルグッズ販売などで、全国各地を巡回する。

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